それは一生の秘密事 6 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「……かなりヤル気になったかも」 口元を押さえて笑いながら俺は呟いた。すると藤原は目をすがめる。 「『かも』じゃ困るのよ。せめて立ち上がりをもう少し安定させてよね、ノーコンピッチャー」 「ノーコン余計だし!」 お前らが言うほどひどくないと思うぞ。そう言って、俺は顔をしかめた。ゆっくり立ち上がると、下から彼女の軽やかな笑い声が聞こえてくる。 ま、いいか。 ケタケタと響く笑い声を聞いて、俺は思った。そして口を開く。 「そしたら俺も捧げるかな、残りの青春」 ぽつりと言ってみると、視界の隅で茶色い頭が動くのが見えた。 「いいんじゃない?」 視線を落としたその先には、やけに眩しく見える藤原の笑顔。つられて俺も笑みを浮かべて――そうして俺たちは二人、アイツらが来るのを待った。 明日からまた練習、厳しくなんだろうな。 だけど、たった一人のマネジのために頑張ってみるのもイイかもしれない。 のんきにそんなことを思いつつ、俺は浮かべた笑みを深めた――。 『それは一生の秘密事』終 |