そして今日も空は晴れて 5 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「気にするつもりも、お前を困らせるつもりもないんだけど。やっぱり、何かさ」 ちょっと面白くない。 彼は拗ねた口調で、そう言った。 ……えーと、それってもしかすると。 「……ヤキモチ?」 「……悪いかよ」 不謹慎だけど半分笑って訊ねた問いに、曽根は完全に視線を別方向に向けて答えた。耳まで赤いよ、曽根。 うわ何か何か。 「……感動だわ」 「お前なあ……」 口元に手をあてて言うわたしに、呆れた様子の曽根。その彼にわたしは両手を握り締めて力説する。 「だって曽根ってそういうこと言うように見えなかったんだもん!」 「だってお前、言わなきゃわかんないじゃんか」 曽根が妙に静かに言った。わたしはそれに勢いを削がれ、首を傾げて彼を見上げる。すると曽根はまた、わたしの頭に手を乗っけてくる。 そして、言う。 「言わないと、また勝手に不安がって思い詰めて、逃げちまうだろ。もう追いかけっこはゴメンだからな」 「もう、逃げないもん」 その言葉に上目遣いで反論した。わたしのはっきりした言い様に曽根は一瞬目を見開き、そして笑う。 それはいつもの無愛想な顔からは遠くかけ離れた――びっくりするくらい、あったかい柔らかな笑顔。 そのカオのまま、彼は続けた。 「それでも、俺がお前に不安になってほしくないからさ。だからお前も、ちゃんと話せよ。そのほうが俺も嬉しい」 ――お前、変なほうに考えすぎるから、遠慮しないくらいで丁度いいんだよ。 ぽんぽんと、頭上の手が優しく弾む。 ああもう。 その笑顔で、そんなこと言うのは反則でしょう? 嬉しすぎて泣きそうで、曽根の顔を見てらんない。せっかくの貴重な笑顔だっていうのに。 頭上のリズムはまだ止まない。彼の言葉も。 「俺は気ぃ短いし、乱暴だし。だから怒って、お前を怖がらせちまうこともいっぱいあると思うけど」 曽根の手が止まったのを感じて、わたしはゆっくり視線を戻した。見上げた先には、さっきと変わらない穏やかな笑顔。 「それでもさ、ちゃんと向き合ってたいと思うんだよ」 どーよ? と首を傾げて訊ねてくる彼。ニッと笑った口元が、屈託なく細められた瞳が、普段よりずっと子供っぽく見えて。何だか心がほっこり暖かくなってきて、わたしも自然に笑みがこぼれた。 「うん、そうだね!」 その返事に曽根は満足そうに頷いて、もう一度わたしの頭を叩いた。 |