そして今日も空は晴れて 3 しおりを挟むしおりから読む目次へ それというのも。 「だってヒトの奢りでケーキ食べ放題よ?」 こちらは珍しく上機嫌で話す、甘党女王・冴香様。実は今回散々迷惑をかけたお詫びに、わたしと曽根は冴香とマミーにケーキバイキングをご馳走することになってしまったのだ。 別にわたしはいいんだけどね。わたしが悪かったのは確かだし、二人にはお世話になったし。だけど曽根はさあ……。 そう思って、ちらっと彼を見る。あ、また眉間の皺が深くなった。 曽根はわたしの視線を気にすることなく、冴香にぴしゃりと言い放つ。 「太るぞ」 「残念。わたし、平均より軽いくらいだから多少の体重増加は平気なの」 しかし冴香は機嫌を損ねることもなく、曽根の嫌みをあっさりかわした。うん、冴香はスタイルいいもんね。もう少し太ったって許容範囲だもんね。ひとり心の中で納得しながら、わたしはそっと曽根のセーターの裾を引っ張る。 「あ?」 機嫌の悪い表情をそのままに、彼はこちらを見下ろしてきた。どういうヒトか分かってたって怖いんですけど! なので、わたしは身体を縮こませて小さく謝る。 「ごめんね、巻き込んじゃって」 「……別に謝ることじゃねえよ。俺も当事者なんだし」 少し表情を和らげて、曽根が言ってくれた。その言葉に、ほっと胸を撫で下ろす。 だけどそこに、また余計な一言が飛んできた。 「はーい藤原さん、そこでこっそりイチャついてるバカップルがいまーす」 「あらあら」 「哲!」 「マミー!」 ニヤニヤ笑うマミーと冴香に、声を荒げる曽根とわたし。せっかく和らいだカオをまたしかめて、曽根がマミーに言い募る。 「誰がバカップルだ誰が!」 「タカと瀬戸」 「てめえ……!」 飄々と返すマミーに、歯軋りする曽根。わたしも何か言ってやろうと思って、口を開こうとしたがその前に、冴香のとどめの一言が。 「校内で追いかけっこした挙句にくっついたヒトたちを、バカップルって呼ばないで何て呼べばいいのかしら?」 「……」 もう言い返すコトバもございません。わたしはげんなりと肩を落とした。隣を見上げれば、ぐったりした表情の曽根。 そんなわたし達には目もくれず、マミーと冴香は早く早くと急かし出す。 「俺もう、腹減って死にそう」 「ぼけっとしてないで行くわよー」 そして二人はスタスタと駅ビルの中に入って行ってしまった。仕方なく、わたしと曽根もその後を追う。 「いっそ糖尿になっちまえ」 「まあまあ」 毒づく曽根を、わたしは苦笑いでなだめた。すれ違う人に気を使いながら、二人で並んで歩く。 何だか、夢みたいだなあ。 去年の今頃は知らなかった人が、今は一番近くを歩いている。そんな不思議な巡り合わせをかみしめて感じていると、ふと曽根から声がかかった。 |