そして今日も空は晴れて 2
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「でもね、やっぱり優しいんだ」

 忘れなくてもいい。なくさなくてもいい。

「わたしの持ってるもの、そのままでいいって言ってくれたんだ。きっと嫌な思いもしてるはずなのに」

 それでもその人は――曽根は受け入れてくれた。

「……好きだって言ってくれたんだ」

 俯いて思い返して、わたしは何だか泣きたい気分になった。曽根がくれた言葉と気持ちが、ダメなわたしには優しすぎて、胸がいっぱいになってしまう。

 曽根はわたしに力をくれた。泣いたり悔やんだりするんじゃなくて、有ちゃんのいない現実と笑顔で向き合うための力。

 遺してもらった想いと記憶を、優しいものに変えていけるように。

「わたし、もらってばかりだね」

 有ちゃんからも、曽根からも。

「ちゃんと返していかなくちゃ」

 呟いて、両足に力をこめた。勢いよく立ち上がる。さらりと揺れた髪が頬にかかった。

 支えられてばかりの、逃げてばかりの日々はもうおしまいだ。わたしはわたしの大切な人たちに恥ずかしくないように、もっとしっかりしなくては。

 もらった想いにふさわしい人間になりたい。

「見ててね、有ちゃん」

 今自分ができる最上級の笑みを浮かべて、わたしは言った。

 吹き抜ける風が、白い花を微かに揺らしていった――。


*  *  *


「そー―ねー―っ!」

 いつかのように大声で、彼を呼ぶ。呼ばれた当人は……あ、何かイヤがってる雰囲気だ。耳を塞いでそっぽを向いてる。

 そのかわり、彼の隣に立っている人が大きく手を振って応えてくれた。マミーだ。その後ろから、冴香がひょっこり顔を出す。

「終わるの、早かったんだね」

 ぱたぱたと軽い駆け足で彼らのもとにたどり着き、わたしは言った。お墓参りの後、わたしは部活終わりの曽根たち三人と駅で待ち合わせをしていたのだ。

「女王様の一声でな」

 いつもと変わらない仏頂面で言う曽根。彼にしてみれば貴重な練習時間を不本意な用事でつぶされてるんだ。機嫌がいいわけないだろう。



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