足りない、足りない 7
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(だから、なのかね?)

 だからこその信用なのか。だからこその慣れなのか。どっちでもいいから、脚だけは隠しておいて欲しかった。スカートからすんなりと伸びた彼女の両脚は、今の俺にとって目の保養にはならない。却って、毒だ。

 別に足りなかったのは、そういう意味だけではないけれど。でも、色々とキますよ。健全な一青年としてはさあ。

 綾部は相変わらず、起こすのがもったいないくらいの気持ちよさそうな顔で眠っている。だからって起こさずにいたら、めちゃくちゃ拗ねるんだろう。それは十分過ぎるほど予想がつくけど、なかなか起こす気になれなくて。

 しばらく彼女の寝顔を眺めたあと、俺はぼそりと呟いた。

「――顔、洗ってこよ」



 まずは脳裏に巣食った煩悩を払い落とさないと、後ろめたくてしょうがない。


『足りない、足りない』終

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