カレの友達 4 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「例えばさ。そのヒトがまだ生きてるっていうなら、ややこしい話になるんだけど」 マミーがゆったりとした口調で話す。わたしは黙ったまま、耳を傾ける。 「現実は違うだろ?」 そうだ。有ちゃんは、もういない。 「亡くなった大事なヒトを、思い続けるのは悪いことじゃないと思うよ。ただね」 そこで立ち止まっていてはダメだ、と彼は続ける。 「立ち止まって思い続けても、何にも変わらないよ」 どんなに思っても、有ちゃんはもうわたしに何も言ってくれない。わたしも彼に、何もしてあげられない。 「だけど、タカは違うよ。瀬戸を怖がらせたり泣かせたりすることもあるだろうけど、きっと沢山笑顔もくれる」 その言葉に、わたしは何度も首を縦に振った。 そして思った。同じだけ、曽根にも笑顔でいてほしいって。 今思い出すのは、あの時わたしが逃げる直前の曽根の表情(かお)。 怒ったような、すねたような。でも何だか、心細そうな表情。 そんな顔、してほしくなかったのに。 不意に涙腺が緩んで視界が滲んだ。両方の拳を握り締めて、わたしは何とか堪える。 マミーは音もなく静かに立ち上がると、ぽんとわたしの肩を叩いた。そのまま彼は窓際に移動する。 「タカは話したがってるよ、瀬戸と」 くるりと、顔だけ振り返ってマミーは言った。瞬間、胸がぎゅっと苦しくなる。 「わたし……」 いいのかな? こんないい加減なキモチのままでも、曽根がまだ話をしてくれるっていうんなら。 今度こそ、逃げ出さないで彼に向かい合いたいと。そう望んでも、いいのかな。 「曽根に、会いたい」 上手く説明できなくたっていいんだ。ただ曽根へのキモチは嘘じゃないって。何も変わってないって、伝えて。 そうして、彼の『答え』をちゃんと聞きたい。 それがわたしの『やるべき』コト。 そしてわたしの『したい』コト。 |