連鎖する僕ら 10
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「お前が俺のこと考えてくれて、気ぃ遣ってくれてんの、知ってるけど。でもさ、あんまり邪魔になんねぇようにとかメーワクになんねぇようにとか……そうやって我慢ばっかさせて、頼ってもらえねぇのは、結構ツライよ」

「っ! ごめ……」

「謝んなくていいから」

 瀬戸の言葉を遮るようにして、俺は彼女の目を見据える。瀬戸が息を呑むのが、分かった。ちょっと怯えたように見える辺り、俺はずいぶんと怖いカオをしてるに違いない。

 思わず苦笑すると、瀬戸が首を傾げた。少しだけ表情が和らいで、自然と俺のほうも力が抜けた。張りついたみたいに瀬戸の肩を掴んでいた手を外して、今度は頬を撫でる。すると瀬戸はくすぐったそうに、目を細めた。

「自分のこと、優先させてばっかの俺が言うことじゃねえんだけど」

 少しだけ気まずい気分で前置きをしてから、俺は続けた。

 離れてく俺が、待っててくれる瀬戸に伝えたいこと。――頼みたいこと。

「遠慮すんのはお前の性格だから、そう簡単には治んないだろうけどさ。でも、必要以上に考えすぎんな。遠慮して、我慢して、俺のこと、遠ざけんな」

 物理的な距離は――どうしようもないけれど。

「……気持ちだけは、近くにいて欲しいんだ」

 近くにあるって、思わせて欲しいんだ。当たり前に隣にいた日常が、当たり前じゃなくなる――それは俺が思っていたより、ずっと大きい変化で。

 触れることも、いろんな表情を見ることも、そう簡単に出来なくなってしまう。それはきっと、思いの外つらいことに違いない。――それでも。

「そう思わせてくれたら、俺も頑張れるから」


 キミが好きだと言ってくれた自分のまま、突き進んでいくことが出来るから。


「だから……頼むよ、瀬戸」

 触れていた手をするりと離して、俺は頭を下げた。我ながら、らしくないし、情けねえとは思う。だけど、仕方ない。これが俺の本心だ。たとえ、『今更、何言ってんの?』と幻滅されたって、こればっかりは嘘はつけない。

 頭を下げた姿勢のまま、俺は待った。瀬戸が発するはずの、次の言葉を。だけど瀬戸は口を開くより先に、俺の首にしがみついてきた。その勢いに、俺は慌てて体勢を整える。

「おいっ!」

 顔を上げて、しがみついてきた彼女を抱えて、俺は狼狽えた。その小柄な身体のどこに、ンな力があるのか。絞め殺す気かってくらい、ぎゅうぎゅうと瀬戸は抱きつく腕に力を込めてくる。でも、何も言わない。

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