連鎖する僕ら 10
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 離れた場所で『何かおかしい』と思っても、いつでも確かめに行けるわけじゃない。かろうじて、声を聞くことは出来るけど――それだけじゃ、全ては把握しきれない。俺はただでさえ、ヒトの気持ちの揺れ動きみたいなものに関しては鈍い人間だし。瀬戸は瀬戸で、俺に当たるくらいなら一人で抱え込むことを選んじまう――そういうヤツだから。

 俺はまだ自分の好きなことを存分に出来るんだから、それほどではないだろうけど、瀬戸は違う。瀬戸は自分で言ったんだ。『待ってる』って。待ってる以上――待たされてる以上、我慢を強いられるのは彼女だ。俺だって今までみたくしょっちゅう会えなくなるのは、正直堪える。でも俺たちがこれまでと同じ関係を続けるために、俺以上に頑張ってくれるのは瀬戸だ。

 その彼女を会ってるときすら、マトモに甘えさせてやれないなんて。それじゃあ、俺がコイツの彼氏でいる意味がないだろう? そんなときくらい、変な遠慮は捨てて欲しい。そう思うのはおかしなことだろうか。

 俺が黙ったままでいると、ふと瀬戸が目を上げた。困ったように揺れる、大きな瞳。それをじっと見ていたら、更に瀬戸は困ったカオになった。俯き加減になって、小さく小さく口を開く。

「今でも、申し訳ないくらい甘えてるつもりなんだけど……」

 だから、これ以上は勘弁してくれという口振りで話す瀬戸。けど、俺はそれをきっぱりと撥ね付ける。

「ついさっき、『甘えすぎないように』とか言ってたのはどこの誰だ?」

「それは……その、」

「大体、お前は限界越えて、周りにバレバレでも『大丈夫』とかふざけたこと言ってんだろうが。だから余計に心配なんだって」

 肩を竦めて俺が言うと、瀬戸はしおしおと項垂れる。

「ごめんなさい……」

「別に謝ってもらうようなことじゃねえけどさ」

 謝って欲しいわけじゃない。そうじゃなくて、ただ分かって欲しいだけだ。

「――俺が、寂しいんだよ」

 囁くように落とした呟きに、瀬戸が軽く目を瞠った。あんまり『らしくない』科白に驚いたんだろう。俺だって、自分がこんな気持ちになる日が来るなんて、考えたこともなかった。



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