連鎖する僕ら 10
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 意を決して、俺は一度大きく息をついた。瀬戸を抱えてた腕は両方とも、彼女の肩に移動させる。

 正面から瀬戸と向き合うと、彼女はやっぱり訳が分かってないようで、不安そうに俺のほうを見返していた。ぱちぱちと何度も瞬きを繰り返す、瀬戸の大きな目。それを見つめながら、俺はゆっくり口を開く。

「――俺は、いつも勝手なことしてるから」


 ふと見下ろした傍らで、振り返った背後で、寂しそうに笑ってるのを知っていても。

 結局、俺は自分で選んだことを変えられない。諦めきれない。


「それでもいいって、お前は笑ってくれるけどさ。でも我慢ばっかさせてて、いいわけねえだろ?」

 瀬戸が待っててくれること。『頑張れ』って言ってくれること。――それは確かに俺にとって、何よりの力になるけど。でも。

「俺だって、お前の力になりたい。お前が俺を支えてくれるみたいに、俺もお前にとって、そうでありたい」

 そうでなきゃダメだと思うんだ。俺はきっと自分で考えてた以上に、瀬戸に惚れてて、依存してて。正直、相手が瀬戸じゃなかったら、俺みたいな野球バカはすぐに愛想を尽かされてたに違いない。それくらい、俺は自分中心な人間だって自覚は、十分すぎるほどある。

 だけど――ここまで言っても、やっぱり瀬戸は首を横に振った。

「……十分、なってくれてるよ。曽根がいたから、わたし、こんなに元気になれたんだもん」

 そう言う彼女の表情に嘘はない。本気でそう思ってくれてるんだろう。それは俺も、素直に嬉しいと思う。けど、それでも。

「それでも、俺はまだ足りないと思ってる。俺はそれ以上に、お前に支えてもらってきたって思ってるから。だから……」

 両肩を掴んだ手に力を込めて、俺は言った。

「側にいるときくらい、遠慮しないで甘えてくれよ。こうやって近くで顔見て、触って……そうしないと分からないこととか、出来ないこととか、いっぱいあるだろ?」

「曽根……」

 懇願するような、俺の物言いに驚いたのか。どこか茫然として、瀬戸はこっちを見返していた。

 何度も言うけど、俺は決して察しのいいほうじゃない。だから、きっといろんなことを見落として、それで瀬戸に我慢させてきたことがいっぱいあると思う。それでも今まで何とかなってたのは、俺たちが同じ場所にいたからだ。同じ場所にいて、言葉以上に分かりやすい表情の変化を目の当たりにして、必要なら触れて、その度に気持ちを伝えて確かめることが出来たから。でも、これからは違う。


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