連鎖する僕ら 10
しおりを挟むしおりから読む目次へ






 瀬戸が笑ってるのも、我慢してるのも、みんな俺のためだ。俺が何も心配することなく、前だけを見ていられるように、彼女なりに一生懸命気遣ってくれて。昔も、今も、これからも――瀬戸はそうやって、俺を見ててくれる。待っててくれる。その気持ちを疑うなんてこと、絶対に有り得ない。むしろ問題なのは、そっちじゃなかった。

 バレバレの我慢を続ける瀬戸に対して、俺が心配したのは別のことだ。無理な笑顔の裏には、寂しいとか、悲しいとかいう感情が溜め込まれているはずで。それを俺に言わないで、コイツは一体どこに吐き出すつもりなんだろう。藤原みたいな友達に愚痴ることで消化出来るなら、それでもいい。悪口の十や二十、言われることは覚悟してる。でも反面で、瀬戸は言わないだろうなとも確信していた。

 なるべくヒトに心配をかけたくない。どっちかと言うと、自分より他人を大事にする彼女だから――だから、思ったんだ。きっと、コイツは一人で泣くんだろうって。俺の迷惑は勿論、他の誰の迷惑にもならないように、こっそりと一人で。

「――お前、バカだろ?」

 抱き締めたままそう言うと、瀬戸はむっとしたようにこちらに顔を向けた。

「どういう意味?」

「そのまんまの意味だよ」

 訊ねる瀬戸に、俺は淡々と告げた。

「いっつも変なトコで遠慮してさ」

「う……」

「変なトコで我慢して、変なトコで強情で」

「そんなこと、は……」

「普段はアホみたいに単純なくせに」

 そして、どうでもいいことでは上手く甘えてくるくせに。

 最後は胸中のみで呟いて、俺は瀬戸の顔を覗きこんだ。急に間近に迫ったから、びっくりしたんだろう。瀬戸は慌てて離れようとする。だけど、俺はそれを許さない。大きめの瞳を真正面から見つめると、瀬戸は狼狽えて赤くなる。いつになっても、瀬戸のこういう反応は変わらない。いい加減、慣れてもよさそうなもんだけど。

 そんなことをぼんやりと思いながら瀬戸の顔を見ていたら、彼女はゆっくり目を伏せた。

「別に、そういうんじゃないよ」

 伏せた目をそのままに、彼女が続ける。

「別に意地張ってるとかじゃなくて……確かに甘えすぎないようにしなくちゃとは思ってたけど」

「何で?」

 瀬戸の言葉に、俺は不満を露にして訊ねた。瀬戸がきょとんとした表情をこちらに向ける。

「何で? って……」

「何で、そこで俺に甘えすぎないように遠慮すんだよって訊いてんの!」

 少し口調を強めて言うと、瀬戸は唇を尖らせた。そして上目遣いで、俺を睨む。


- 340 -

[*前] | [次#]






「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -