カレの友達 2 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「冴香……怒ってるでしょ?」 野球部の女王様。それはわたしの親友・冴香のこと。ここのところ、わたしは全力で彼女を避けていたから(だって冴香はコワイんだもん)、多分かなりご立腹だろう。 思った通り、マミーは乾いた笑顔をつくると大きく頷いた。だけど次の瞬間には、真面目な表情でわたしを見た。 「瀬戸がいちばん気にするべき人は、他にもいるだろ?」 はい。その通りです。 「曽根、は……?」 こんないい加減な状態のわたしに、曽根を心配する資格があるんだろうか。それでも訊(き)かずにはいられなくて、わたしは問いを口にした。 「あれは……落ち込んでる、かな」 マミーは少し首を傾げつつ答えてくれた。だけど。 「落ち込んでるって……?」 ぽつりと落としたわたしの問いに、マミーは露骨に顔をしかめた。 「好きな子にもう何日も避けられてんだぜ? しかも事情説明もなしに」 タカだって、人の子ですよ。 マミーはそう言って、机に頬杖をつく。 でも、だったら尚更。 「怒ってるんじゃないの?」 そうして愛想を尽かされるのだと、わたしは思ってたから。だからマミーの言葉はとても意外だった。 「だって『時間が欲しい』って言われたんだろ?」 「それはそうだけど……」 わたしは言い淀む。だってそれはもう、無効にされたっておかしくない。それだけヒドイことを、わたしはしているんだから。 俯いてしまったわたしに、マミーは珍しく怒ったような声で言った。 「アイツの話を聞かないで、アイツの気持ちを決めつけるなよ」 痛い言葉だった。そして、その通りだと思った。 わたしはずっとそうだった。自分の言いたいことだけを伝えて、いちばん大事な肝心なことを聞かないで逃げ出して。どんなに覚悟を決めたつもりでも、曽根の本気と向き合うのが怖くて。 それじゃダメなんだって、分かってるのに。 「瀬戸さぁ」 さっきとは違う、少しのんびりした口調でマミーがわたしを呼んだ。わたしは恐々と彼に目を向ける。その焦点が自分に合ったのを察して、彼は訊ねてきた。 「そんだけビビってて、何でタカに告白できたの?」 ――何でって、それは。 曽根ともっと仲良くなりたかったから。 もっともっと、曽根の近くに行きたかったから。 くだらないことで一緒に笑えるその距離を、もっと確かなものにしたかったから。 |