カレの友達 1 しおりを挟むしおりから読む目次へ 今日こそは。今日こそは。 そう思っても、もう後にも先にも行けなくなった。 なれ親しんだ油絵の具の匂いが、わたしを落ち着かせてくれる。 放課後の美術室。わたしのほかに人はいない。 この何日か、わたしは出来るだけ一人になりたくて色んな人を避けていた。 冴香にマミーに、曽根。 逃げ回っていても、何ひとつ解決しないのはわかっている。だけど何をすればいいのか、わからなくなってしまった。 空っぽのわたしの中にかろうじて残ったのは、伝えられなかった有ちゃんへの想いと。 それでもやっぱり、曽根が好きだという気持ち。 言えなかったコトバは胸の中で燻っている。まだほのかな熱を発していて。 行き場のない想いを消すことは、忘れることはできないのだろうか。だけど、そうしなければわたしはもう二度と、曽根に向き合えない気がするんだ。 忘れなければ、曽根を好きでいてはいけない気がするんだ。 「……どうすれば、いいかなぁ」 誰もいないんだから、当然返事はない。期待もしていない。だからその声が聞こえたとき、ホントに口から心臓が飛び出るんじゃないかってくらいびっくりした。 「そんなときは、誰かとちょっと話してみない?」 「ぎゃっ!」 我ながら奇妙な声をあげて、ゆっくりとわたしは入口のほうを見た。そこに立っていたのは。 「……マミー」 「あのさ……こういうときぐらい普通に呼んでくれてもいいと思うんだけど」 呆然としたわたしの呟きに、彼は苦笑混じりにそう言った。でもわたしには、それが普通だし。だからわたしは敢えてそのまま、彼に問いかけた。 「マミー、部活は?」 「俺は女王様の命令で、お姫様に会いに来たの」 マミーはそう答えると、早足で中に入って来る。そして断りもなく、わたしの近くの椅子に腰を下ろした。 |