連鎖する僕ら 8 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「相変わらず、聞き分けがいいよねぇ。瀬戸は」 一瞬だけ気遣わしげに眉をひそめた後、マミーがため息と一緒にそう言った。 「困らせてやりゃいいじゃん。しばらく甘えられないんだから」 「そういうわけにはいかないよ」 わたしは静かに首を横に振った。すると三人が三人とも、微妙な表情になってしまう。うーん、やっぱりそうなるよね。友達相手でコレだもん。当の本人を相手にしたら、もっと困らせてしまうだろう。わたしは苦笑して、出来るだけ軽い調子で口を開いた。 「みんなして、そんなカオしないでよー。ちゃんと前の日に時間取って、ゆっくり会えるようにしてくれてるし。それでわたしは十分。大丈夫なんだから」 「初璃ちゃん……」 明らかに『心配です』という表情で、美希ちゃんがわたしを見た。気まずくなったわたしは視線を少し落とす。 大事な友達にこんなに心配かけて――わたしは今、どんなにヒドイ顔をしてるんだろうか。 ため息を吐こうとして、わたしは慌ててそれを飲み込んだ。そんなことしたら、また心配かけるだけだ。しっかりしなくちゃ。明日でみんなともお別れなんだ。別に一生会えなくなるわけじゃないけど、でも、こうやって同じ場所で同じ時間を毎日過ごすようなことはなくなってしまう。それなのに最後まで心配かけるだけなんて、情けないにも程がある。 だから、わたしは笑った。もう一度、自分にも言い聞かせるように繰り返す。 「大丈夫だよ。そりゃ、やっぱり寂しいから……いつもみたいに笑ってはいられないけどさ。でも、そればっかり考えてても仕方ないから」 確かに不安は不安なんだけど、実際にその状況に置かれてしまえば、何とかなるものかもしれないって、思ったりもしてるんだ。大学に入学して曽根が忙しくなるのはもちろんだけど、わたしだって条件は同じ。寂しいキモチは消えないだろうけど、それにいつまでも囚われていられるほど暇じゃないはず。やってみたいことも、やらなきゃならないことも、これからいっぱいあるんだ。それは曽根が側にいてくれたとしても、そうじゃなくても変わらないことで。 曽根は自分のやりたいことをちゃんと知っている人だ。そのために何をするべきなのか、何を優先して選ぶべきなのか――ちゃんと知っている人。選んだ道を迷わず進んでく、強さを持っている人だから。 |