連鎖する僕ら 8
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「大体、その程度で泣くようなタマかよ。あいつが」

「愛しの彼女と離ればなれになるんだぜー? いくらタカがとんだ俺様野郎でも、寂しくないわけないだろー?」

「だからって、人前で泣くとは思えないんだけどな」

「むしろ泣かす方向で色々仕掛けようかと」

「やめとけ。最後の最後に血を見るぞ」

「えーっ」

 不満げに口をへの字に曲げるマミー。つまらなそうに持っていたペンを机に転がした。その様子に、わたしと美希ちゃんは顔を見合わせて笑う。

 楽しいなぁと思う、こんなとき。そして同時に寂しいなとも思うんだ。

 ふと目線を手元に落とした。受験が終わってからのわたしは、自分でも驚くくらい感傷的になっていた。そりゃあ曽根や友達と学校が別れるのは寂しいけど、いつまでも一緒にいられるわけがないことはずっと前から分かっていたのに。それなのに、わたしは何だかフラフラしてる。

 明日、ここを卒業したら――その先はまた、一人で頑張らなきゃいけないのに。新しい世界を作って、そこに慣れていかなきゃいけないのに。なかなか気持ちは浮上してくれない。

(……ダメだなあ、わたし)

 胸中でひとりごちた、ちょうどそのとき。成瀬くんに再び問われた。

「瀬戸さんは?」

「へ?」

「瀬戸さんは見送りしないの? 曽根の」

「あー、うん。しない」

 ていうか、出来ない。そう答えると、その場にいた全員が不思議そうな顔をする。

「ナンデ?」

 代表して訊ねてきたのは、マミーだ。わたしはそっと苦笑した。

「曽根ね、お父さんの車で向こうに行くんだって。さすがに家族のいるところで見送りするのは、ちょっとね。自信なくて」

「何の?」

「笑って見送る自信」

 もしくは、泣かずにいる自信。わたしはそんなひどい泣き虫というわけではないけれど、今回ばかりは自信がない。たとえ泣かなかったとしても、多分笑えない。そうしたら、きっと曽根に気を遣わせてしまうだろう。家族の前でそんなことしたら、迷惑以外の何物でもないと思う。

 最後の最後で曽根を困らせるようなこと、したくないんだ。出来る限りの笑顔で、頑張ってねって送り出してあげたいもん。


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