連鎖する僕ら 8 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「卒アル見ながら話してたらさ、こんな時間になっちゃって」 わたしの問いに、成瀬くんが肩を竦めて答えてくれた。続けて美希ちゃんがぱたぱたと、わたしを手招きする。 「初璃ちゃんもよかったらおいでよー。お菓子もあるし」 「やー、でも……」 曽根を待たせてるんだよなーと思いつつ、ふと手元のアルバムに目を落とした。そういえば、成瀬くんと美希ちゃんにはまだ書いてもらってないんだった。 明日は卒業式当日で、書いてもらう時間があるかどうか分からない。そう思ったわたしは心の中で曽根に手を合わせて、窓越しにアルバムを差し出した。 「そしたら、これ書いてもらっていい?」 「書かせて書かせて! そんで、わたしのも書いて!」 にっこり笑った美希ちゃんがアルバムを受け取ってくれた。その様子を見ていたマミーが苦笑いしながら、訊ねてくる。 「いいの? タカが待ってんじゃない?」 「……あとで全力で謝罪させていただきます」 ちらりと自分の教室のあるほうを見てから、わたしも苦笑った。隣のクラスとはいうものの、教室の位置は階段とかトイレを挟んだ向こう側だから、ここからではあちらの様子は分からない。出来るだけ迅速に用件を済ませて、ダッシュで戻って謝ろう。こっそり心に決めて、わたしは三人に促されるまま、8組の教室に足を踏み入れた。 * * * 「そういや」 右手にピンクのサインペンを持った成瀬くんが、ふとその手を止めた。 「ふぇ?」 こちらに向けられているようなその声に、わたしは勧められたお菓子をくわえたまま、顔を向けた。目が合って、成瀬くんが言う。 「曽根のヤツ、いつ引っ越すのか聞いてる?」 「えーと、」 「来週末だってさ」 答えかけたわたしの声を遮って、一人だけ机に腰かけたマミーがペンを手持ちぶさたに回しながら言った。成瀬くんが更に問う。 「見送りとか、どうすんの?」 「聞いたけど、来なくていいって言われてさー」 マミーが唇を尖らせた。拗ねたような口振りで続ける。 「せっかく公衆の面前で泣かせてやろうと思ったのに……」 「だから来るなって言われんだろ」 マミーの言葉に、成瀬くんが呆れた声で突っ込んだ。 |