連鎖する僕ら 7
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「ソレ、書いてもらいに来たのか」

「うん、そう」

 曽根の問いを肯定して、わたしは抱えていたものを彼の机に下ろした。しっかりとした作りの紺色の表紙のそれは、それなりの重さがある。三年分の高校生活の思い出が詰まっているのだから、当たり前なのかもしれないけど。

 いわゆる、卒業アルバムというヤツだ。

 先ほど終わったHRで配られたそれを持ち歩いているのは、何もわたしだけではない。ここにいない初璃も、多分アルバムを抱えて美術室に行っているはずだ。顧問か後輩かは知らないけど、表紙の裏にメッセージを書いてもらうために。

 かくいうわたしも、そのために彼女のクラスを訪れたわけだけど――いないんじゃ、待つしかない。曽根がここにいるってことは一緒に帰るつもりなんだろうから、戻ってくるんだろう。だったら、待ち時間は有効に使わなければ。そう思い立ち、わたしは曽根の前でアルバムを広げた。

「せっかくだから、あんたも書いてよ」

 そして持参したペンの中から一本、差し出す。曽根は軽く頷いてから、それを受け取った。

「どこでもいいのか?」

「テキトーにどうぞ」

 相変わらず愛想のない無表情で問うてくる曽根に、わたしは肩を竦めて答えた。すると、今度は逆に曽根のほうからアルバムを差し出される。

「こっちも」

「ハイハイ」

 わたしはそれを受け取り、ペンを構えて表紙を捲った。さて、何て書いてやろうか。そう考えつつ、すでに書かれているメッセージにざっと目を通す。三年間、野球のことばっかりで、進学先もそれを優先させて決めた、曽根の『野球バカ』っぷりはしっかり浸透していたようで。寄せられた文面には「野球、頑張れ」の一言が必ずといっていいほど添えられている。

(とりあえず、それは書いとかないとねぇ)

 そのためにヤツは、わたしの大事な親友に寂しい思いをさせるんだから。しっかりやってもらわないと。そう思いながら書く場所を探す。すると下のほうに、やたら大きく書かれた一文を見つけた。


『帰ってきたらキャッチボールやろうな! 間宮哲』


 その名前を見た瞬間、息苦しくなった。そういえば、間宮もこのクラスの人間のはずなのに姿が見えない。曽根が居残ってるんだから、一緒にいてもよさそうなもんなのに。どこに行ってるんだろう? それとも、もう帰ったんだろうか。



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