連鎖する僕ら 7 しおりを挟むしおりから読む目次へ そもそもわたしは何事に対しても、白黒をはっきりつけたがる人間だ。 曖昧な『答え』を出すことは、自分をごまかして目の前の問題から逃げ出してるみたいな感じがして――相手に対しても、失礼なことだと思ってきた。だから何かあったときは、いつでも自分の中に『答え』を用意するようにしていた。白黒はっきりつけた、誰が聞いても分かりやすい明快な『答え』を。そして、そんな自分を好ましく感じていた。 でも、今はその『答え』をなかなか用意できないでいた。胸の中で渦巻いてたのは、曖昧でもやもやした、息苦しいような、痛いような――そんな思いだけで。 自分で自分の気持ちが判らないなんて、はじめてのことだ。そして、そんな状態が長く続いていることが怖かった。今まで支えにしていたものがなくなってしまったみたいで、足元が覚束なくて、何だか迷子にでもなってしまったような気分で毎日を過ごしていた。こんな精神状態でよく魔の受験シーズンを乗り越えられたと思うわよ、ホント。 受験が終わって、結果も出て――それでも不安定な気持ちを持て余してる自分が、すごく情けない。わたしはこういう色恋に関してはホントに駄目な人間なんだってことを、現在進行形で思い知らされている。他人のことならいくらでも偉そうなことが言えたのに、自分のことになるとさっぱりで、迷っては落ち込んで――その繰り返し。全く、わたしらしくない。 季節は、確実に冬から春へと移り変わっていた。最大の試練だった受験だって無事に終えて、いい結果を手にすることができた。友人たちもみんな着実に進学先を決めて、一緒に喜び合うこともできた。そして、あとは卒業を――本格的な春の訪れを待つだけなのに。 それなのに、わたしは未だに迷っている。早く『答え』をあいつに伝えるべきか。それともあいつの言葉に甘えたまま、もうしばらく逃げ続けてしまおうか。 ――らしくないけど、ホントの本気で迷ってる。 卒業式を翌日に控えた、放課後。わたし――藤原冴香は友人を訪ねて、隣のクラスに足を運んだ。後ろのドアから教室を覗きこんで、呟く。 「……あれ」 教室内にはまばらに人が残っていた。だけど、そこに探し人の姿はない。代わりにその人物の彼氏を見つけて、そちらに歩み寄る。 「初璃、いないの?」 端的に訊ねてみれば、返ってくる答えも簡単なもの。 「美術室」 いつもながら淡々とした声でそう言うと、目の前に座っているその人物――曽根隆志は片手で頬杖をついて、こちらを見上げた。そして、わたしが抱えているものに目を留める。 |