連鎖する僕ら 6 しおりを挟むしおりから読む目次へ ぶつ切りの口調で言い切ったそれは、やけにふてくされたみたいに聞こえた。だって、そうじゃないか。まるで、俺がそういうことに慣れてるみたいな言い方されて。 舌打ちしたい気分で、俺はため息をついた。相手の取る行動に右往左往してるのは何もお前だけじゃないんだぞ、綾部。そう言ってやりたいのは山々だったが、何となく口をつぐんだ。今更だけど、正直になりすぎるのも恥ずかしい。代わりに訊ねる。 「そんなふうに見えてた?」 「……うん」 ぐったりとした声の問いに、綾部は申し訳なさそうにおずおずと頷いた。そして、ぽつりぽつりと話し出す。 「あの、成瀬が手慣れてるとか……そういうことじゃないの。そういうんじゃないだけど、でも、わたしより、ずっと上手なんだなって思って……」 「――何が?」 いまいち要領を得なくて、俺は綾部に問い返す。きっと綾部自身も、うまい言葉が見つからないんだろう。一言一言、探り出すようにして続ける。 「上手な恋愛の仕方っていうのかな? つまずいたり、変に狼狽えたりしないで、先に進めるっていうか。わたしはいちいち考えて、立ち止まっちゃうから」 しゅんと肩を落とし、綾部は視線までも下に向けた。 「そういうことだけじゃなくて、成瀬はわたしと違って、いろんなこと上手に出来るでしょう? わたし、いつも頼りにさせてもらうばっかで。だから成瀬のこと、すごいなって思ってて」 「『すごい』?」 「わたしよりずっと大人で、ちゃんとしてる人だって思ってる。尊敬、してる。なのに、わたしみたいな子どもっぽい鈍臭いのと付き合ってて、それが何か悪いことのような気がしてた」 「そんなこと、あるわけないだろ」 そんなこと、あるわけがない。大体。 「買いかぶりすぎだろ、それ」 何とも言えない気分で、俺は額に手を当てた。『すごい人』って……そう言って、褒めてもらえるのは嬉しいことなのかもしれない。まして相手は好きな子だ。喜んでも、いいのかもしれない。けど、俺はそうする気にはなれなかった。 だって。 「俺だって、お前と似たようなもんだよ」 額に当てた手を頭にやり、がしがしと掻く。そうして、さっき言わなかった言葉を口にした。 きっと、やっぱり、言わなくちゃ伝わらないだろうから。 「俺だってお前のことで困ったり、焦ったり、右往左往してんだ」 「うそ」 「嘘じゃないっての」 間髪入れず否定した綾部に、俺は苦笑して返す。 |