カノジョの友達 4 しおりを挟むしおりから読む目次へ 俺は音をたてて立ち上がり、窓のほうに歩み寄った。ふと見上げた空は青かった。見るのに困るほど、もう眩しくない。 「曽根はさあ」 後ろで藤原が言う。俺は振り返らずに、その続きを待った。 「どうしたいの?」 『どうすればいいのか』じゃなくて『どうしたいのか』。 「……笑ってる瀬戸が見たい」 間をとって考えたふりをして、結局口から出たのは最初のときから何ら変わらない答え。 泣いていた彼女と再会した日から――俺はずっと、そう思ってたんだ。 俺の出した解答に藤原は一瞬目を瞠り、そして再び笑った。 「それはあのコに返す『答え』にならない?」 「……なる、のか?」 未だに、はっきりと確信できない。だって俺の中では、野球以上の何かに出会うなんてこと、想定外だったから。 そんな俺に、藤原は呆れた顔で指を突き付けた。 「亡くなった人間と比べられてるかもって、いじけてるくらいだから大丈夫よ」 「……ミもフタもない言い方を」 思い当たるフシがないわけではないので、俺は小声で呟くだけにとどめた。しかし藤原は容赦ない。 「元々アンタ達にそんなもんないでしょ」 そう言い切って、彼女は席を立った。イスの鳴る音に俺は振り返る。 そこに在ったのは、腕組みをして仁王立ちする我が部の女王、藤原冴香。 彼女は実に愉しそうな笑顔を浮かべて言った。 「あそこまで言えるなら、相応の覚悟はあるでしょう?」 「まあ、な」 いずれにしろ俺はもう一度、瀬戸と向かい合わなきゃならない。アイツが何を考えているのか話を聞いて、そしてちゃんと『答え』を返さなくては。――だけれども。 「アイツ……絶対逃げるだろ」 ただでさえ避けられてるってのに、真っ向から攻めていこうもんなら、アイツは絶対に逃げ出すに決まっている。瀬戸は俺が短気なのをよく知ってるから、きっと小動物みたいに怯えんだろう。情けないハナシ。 俺がそう言って頭を抱えると、藤原はムスっとして言う。 「そんなん、わたしだって同じよ」 それはどうなんだろうな、親友として。 そんな思いがよぎったりするが口には出さない。俺も『女王様』を敵にしたくはないから。 藤原は唇を尖らせて続ける。 |