カノジョの友達 3 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「アンタさ、初璃に『待ってくれ』って言ったんでしょ?」 ああ、女ってのはどうしてこう他人事に関して事情通なんだよ。そう思いながら俺は藤原から視線を外した。彼女はなおも言い募る。 「そうやってあのバカと関わることを選んだくせに、肝心なトコで放っておくわけ? 随分なんじゃない?」 自分は都合よく、待たせてるくせに。 手厳しい藤原の言葉に、俺は唇を噛み締めた。事実、その通りなんだ。俺が反論できるわけもない。 「……はっきりしてやらないと、あのコいつまでも迷ったままよ」 「迷ってんのか、やっぱり」 努めてあっさりとした口調で、俺は言った。藤原は嫌そうに顔をしかめる。 「そこまで分かってて何で……」 「何を言えってんだよ?」 外した視線を戻して、俺は唸った。 あの日――あの冬空の下で瀬戸を泣かせていたのは、幼なじみだという男。もう、この世にはいない男。 そんな奴と比べられて、俺が今さらどんな『答え』を出せるっていうんだ? この何日間、ずっと考えていた。 どうすれば、瀬戸は泣かずにすむんだろう。 どうすれば、瀬戸は笑えるんだろう。 怯えたように逃げ回る――そんなこと、させたかったわけじゃないのに。 俺の目線は徐々に力を失い、やがて視界には汚れた床が見えるだけになった。すると、藤原が静かに口を開いた。 「わたしさ」 どこか自嘲気味に、その声は響いた。 「初璃がいちばんつらかったときのコト。何にも知らなかったのよね」 俺は上目遣いになって藤原を見た。だが彼女はこちらを気にするでもなく、そのまま話し続ける。 「あのコ、言ってたわ。あのとき曽根に会えたから、つらくても頑張れたって」 ――あのとき、俺に会えたから。 そうか。やっぱアイツ、覚えてたのか。 だけど、俺はその言葉に首を傾げる。 「別に……たいしたこと、してないぞ」 困惑は、声色から予想以上に伝わったらしい。藤原は思わずといった具合に、笑みをこぼした。 「たいしたことかどうかを決めるのは初璃だわ。ね、カイロの王子様?」 「茶化すな」 俺は憮然として応戦するが、この女王様には何の効果もない。クスクスという笑い声が、室内に響く。 |