連鎖する僕ら 4 しおりを挟むしおりから読む目次へ 四月の終わりに校内でキスしてたのを見られていたどこかのバカップルと違い、こっちの二人はかなりのスローペースのようだ。真面目くんと天然さんの二人らしいペースではある。 しかし、それがどうして。 「俺が藤原にどうこうって話になるワケ?」 眉根を寄せて、俺は訊ねた。綾部さんに俺をネタにしようって気はないから、別に怒るようなことではない。でも、物凄く答えにくい質問だと思う。出来れば、はぐらかしたいとも。 けれど、綾部さんは最初の恥ずかしそうな様子が嘘みたいに、実にしれっと言い切った。 「男の子のことは、男の子に訊くのが手っ取り早いかと思って」 「……はあ」 「それに間宮くんが先に訊いてきたんでしょ? どうしたのって。だから、こういうことも聞いて大丈夫なのかなーと思って」 いいえ、全然大丈夫じゃありません。 胸の内で即答して、俺は引きつった笑みを浮かべた。そして、自分の迂闊さを呪いたくなった。何であんなふうに突っ込んだんだ、さっきの俺。 綾部さんは相変わらず、全く悪気のないカオで俺を見上げている。まるで、小さい子どもみたいに期待に目を輝かせて。こんな無邪気な目で見られてると、テキトーにごまかすことに妙な罪悪感を感じてしまう。 これはもしかして、ちゃんと答えない限り、ここから逃げられないってことか? そう思い至って、俺は心中で毒づいた。成瀬てめえ監督不行き届きだぞ、こんな天然危険物野放しにしてんじゃねえよ。そして、周囲を見回してみる。人気はない。階段の上からも下からも、誰かがやって来る気配はない。 視線を元に戻してみれば、綾部さんは黙って待ってる。俺はその沈黙に耐えられなくなって、ついにヤケクソ気味に口を開いた。 「……そりゃあ、考えたことがないワケじゃないけど」 「やっぱり、そういうものなの?」 俺の答えに、あっさりした調子で首を傾げる綾部さん。何ていうかこの子、ホントにズレてる。端で見てるぶんには面白いけど、実際に絡んでみると結構やりにくい。自分のペースが掴めなくなる。 俺は頭を抱えたくなるのを必死に堪えた。そして、今度は完璧にヤケクソになって言い放つ。 「だって好きな子が相手だしー。俺も成瀬も健全なオトコノコですからー」 惚れた女に触りたいと思って、何が悪い。そりゃ、俺の場合はおおっぴらには言えないけど。まだ何の『答え』ももらってないわけだし。でも、そういう欲はどうしたって存在する。仕方ないじゃんか。自然なことだ。こんなふうに、あらたまって他人に確認されるまでもない。大体――。 |