連鎖する僕ら 4
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「間宮くんはさ……」

「う、ん?」

「冴香ちゃんに、したいと思う?」

「何を?」

「キス」

 ごくごくあっさりと言われたせいで、俺は綾部さんが言ったことがよく分からなかった。なので、言われたことを脳内で反芻する。


 ――藤原に、したいと思うか。

 ――何を、って?


「――なっ!?」

 ようやく言われたことをしっかり理解して、狼狽えた俺は大声をあげた。そんな俺を、綾部さんが「静かに!」と小声でたしなめる。

 や! つーか、いきなりンなことを訊いてくるアナタが問題なんだと思うんだけど!

 そう言いたいのは山々だったけど、俺は言われた通り口を閉じた。綾部さんの目が、いたって真面目なものだったからだ。ホントに本気で疑問に思ったから訊いただけ。綾部さんの表情に、それ以外の意図は見つからない。

 そういえば……と思い出すのは、いつか成瀬が言ってたこと。二人が付き合い始めたばっかの頃に、訊いたことがある。俺は綾部さんとほとんど話したことがなかったから。だから「どんな子なんだ?」って、冷やかし半分で訊いてみたんだ。そして、そのときの成瀬の回答が。


『――変わってる、かな』


 仮にも自分のカノジョにその評価はどうなんだと思ったが、今となっては納得だ。天然っつーか、話すこととか雰囲気がぽやぽやした感じの子だなあとは思ってたけど。まさか、こんな核弾頭みたいな発言力を持っていたとは。

 とりあえず落ち着こうと、俺は一度深呼吸した。それから、ちらりと綾部さんを見下ろす。彼女はひどく生真面目な面持ちでこちらを見上げて、俺の答えを待っているところだった。そこにやっぱり、からかうような雰囲気はない。そのおかげで、割と早く俺は落ち着きを取り戻す。

 冷静になった頭で考えてみた。綾部さんがこんなことを訊ねてくるということは、やっぱ成瀬との間に何かあったってことだ。ケンカとは違う――険悪にこそならないけど、気まずくなるような、何か。さっきの質問の内容から考えれば、あっさりとその結論に行き着くことができる。

 俺は頭を掻きながら、静かに訊ねた。

「それは、綾部さんが成瀬に『された』ってこと?」

「……正確に言うと、されたわけじゃないけど」

 ぼそぼそとした綾部さんの答えを聞いて、俺は「ふうん」と呟いた。

 ――未遂ですか、成瀬くん。


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テーマ「人外ファンタジー」
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