連鎖する僕ら 4
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(今、ンなこと考えたって仕方ないんだけどさ)

 胸中でひとりごちて、カバンを肩に掛け直した。気づかないうちに俯いてた顔を上げて、前を見据える。

 前方に見える階段。それを降りて曲がった先に、図書室に続く廊下がある。この二・三ヶ月ですっかり通い慣れた道のりを、俺はさっきよりしっかりした足取りで進んで行った。


 少しでも好きになってくれる可能性があるんだったら、いくらでも待つって決めたんだ。

 だって今度は、誰にも遠慮しなくていいんだから。

 伝えることも、欲しがることも。


 一段一段、階段を踏みしめて上る。胸の中の決意を噛み締めるみたいに、ゆっくりと。

 そうして階段を上りきった先を見て、――俺はぱちくりと目を瞬かせた。

「――綾部(あやべ)さん?」

 視線の先――つまり階段の最上段には、壁に隠れて何やら廊下の先を窺っている、知り合いの姿があった。名前を綾部美希(みき)さんと言う――我らが野球部の前主将、成瀬新のかわいいカノジョだ。

 俺の呼び掛けに、綾部さんは大きく肩を震わせた。そして、おそるおそるこっちを振り返る。そして。

「あ、間宮くんだ」

 そよ風みたいに軽やかな声でそう言うと、にっこりと微笑んでみせた。――若干、頬を引きつらせて。その様子に、俺は首を傾げる。

「図書室、行かないの?」

 元図書委員の綾部さんは司書のセンセーとも仲が良くて、放課後はよく図書室に入り浸っている。前は委員会の仕事をしながら、成瀬が部活を終えるのを待ってたりしたみたいだ。そして今は藤原同様、連日図書室に来て勉強している――いわゆる、常連組の一人。

 その綾部さんが、何で目的地の手前でこそこそと隠れたりしてるんだ? 不思議に思い、俺はひょいと廊下の先を覗き込んだ。すぐ側で、綾部さんが慌て出す。

「ちょ、間宮くん……!」

「んー?」

 焦って俺を止めようとする綾部さんを軽くいなして、俺はじっと目を凝らした。廊下の先――図書室の前に立つ一組の男女。女子のほうは知らないけど、男のほうには見覚えがある。

「――成瀬じゃん」

 呟いて、また俺は首を傾げた。成瀬があそこにいて、何で綾部さんが隠れる必要があるんだ? 相手は自分の彼氏なんだから、普通に出てけばいいんじゃね? 頭の中に疑問符を飛ばして、思考を巡らせて――そして、思いついた。

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