カノジョの友達 2 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「次の時間、数学でしょ? アンタ得意なんだから、サボったところで問題ナシ」 いや十分問題だと思うぞ。てか、何でお前がウチのクラスの時間割を知ってんだよ。 すると俺の胸中を読んだみたいなタイミングで、藤原がニヤリと嗤った。 「間宮に聞いてカクニン済み。ついでに邪魔されないように場所も手配済み」 冴香サンに抜かりはなくってよ。 藤原はおどけて言うと、俺に立ち上がるよう促した。 ここまでお膳立てされてしまったら、逃げ場はない。用意周到なこの押しの強さに勝てないのは、これまでの経験で学習済みだ。それゆえの『女王様』。 俺は苦い表情でため息をつくと、先に歩きだした藤原の後を追った。 * * * 朝練と放課後以外、基本的に部室は閉めきってある。なので授業中であるこの時間、俺たちがやって来たそこは生暖かい空気がこもっていた。 入口で眉をひそめる俺をよそに、藤原はつかつかと入っていき、窓という窓を開け放した。そして手近なパイプ椅子に腰かける。俺も黙ったまま、それに倣った。 「で?」 心底げんなりとしながら、俺は藤原に問いかける。彼女は目もとをピクリと引きつらせて反応した。 「『で?』じゃないでしょ」 分かっているだろう? 言外にそう言われて、俺は頭をガリガリと掻いた。 あーそうだ。分かってる。 「……瀬戸のことだろ」 ぼそりと低い声で呟けば、藤原は大きく頷いた。 「何で、ほったらかしなのよ?」 その言葉には明らかに俺を責めていた。俺はムッとして藤原を睨みつける。 「逃げ回ってるのはアイツだろ」 たとえ俺が話をしようと思っても瀬戸があの調子じゃ、どうしようもない。それに。 「あっちから話すことはあっても、俺のほうからずけずけ訊(き)くようなコトじゃねえだろ」 「ばかじゃないの」 だが藤原は俺の科白をばっさりと切り捨てた。思わず俺は声を荒げる。 「ああ?」 しかし彼女は動じない。怒りを湛えた表情をして、淡々とした口調で言う。 |