連鎖する僕ら 3 しおりを挟むしおりから読む目次へ 間宮が言えなかったこと――言わないと決めたこと。それはわたしの親友、瀬戸初璃に関することだ。 初璃が好きだってこと。間宮はそれを自分の意思で、本人に伝えないと決めた。初璃は、間宮の相棒で親友でもある曽根を好きだったから。そして二人が付き合い始めたから――だから、間宮は自分の気持ちを押し隠す道を選んだ。初璃と曽根の幸せを壊すことのないように。 それが正しいとか、正しくないとか。意気地なしだとか、優しいだとか。わたしはあれこれ言える立場じゃない。たまたま間宮の隠してた気持ちに気づいてしまって――でも、親友の幸せを考えたら余計なことは言えないし。だから、わたしは成り行きをただ見守るしかなかった。 結果――今も、初璃は笑ってる。それなりに悩むこともあるみたいだけど、あの子は曽根の隣で幸せそうにしている。だから、間宮の選択は間違ってはいなかったんだろう。 その選択に、間宮がどんな後悔を抱いているかは知らないけれど。 間宮はこちらを見ない。見ないまま、続ける。 「だからさ、今度はちゃんと言いたかった」 ふわりと白い息が舞い上がった。 「誰にも遠慮しなくていいんだって思ったら、嬉しくってさ。受験のこととか、タイミング考えないで言っちまったけど」 吐息が舞い上がっては消える。その様子を眺めながら、わたしは間宮の声を聞いていた。いつもヘラヘラしてる間宮の、本音を話す、本気の声を。 間宮が本音を話すとき、こいつの声はいつもより低くなる。普段の騒がしさが嘘みたいに静かになって――つい、引き付けられてしまう。 何も考えずに彼の横顔を見つめてたら――不意に目が合った。一瞬、鼓動が跳ね上がる。 (ちょっ……と) 思わず胸を押さえた。身に覚えのない痛みに顔をしかめる。すると、間宮が怪訝そうに眉を寄せた。 「どうした?」 「何でもない」 その問いに、わたしはすぐにかぶりを振った。でも表情までは上手く取り繕えなかったみたいで、間宮は首を傾げる。だけど、それ以上は突っ込んでこないで話を元に戻した。 |