連鎖する僕ら 2
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「だからって、余裕が有り余ってるわけじゃないんだよ。いいから、お前は集中しろよ」

「だって二人が俺の側で、楽しそうな話してるんじゃん。妨害してるのは、むしろそっちでしょー」

 そう言って、哲は唇を尖らせる。その言葉を聞いて、俺と成瀬はおもむろに立ち上がった。

「邪魔して悪かったな」

「俺らは帰るから、後は一人で頑張れ」

「うわすみません。言い過ぎました。俺が悪かったです。寂しいから帰んないで下さい」

 俺たちの言葉に、哲はあっさりと手のひらを返した。成瀬が呆れて苦笑する。

「お前、ホント調子いいよなぁ」

「まったくだ」

 唸るように同意して、俺は再び席についた。仕方がないから、もう少し付き合ってやることにする。

 思い返してみれば――部活を引退して以来、こうやって集まって話すこともほとんどなくなった。それぞれにやらなきゃならないことがあるんだから、当たり前なんだけど。でも、やっぱりこういう時間は居心地がいい。

 そんなふうに素直に思えてしまうあたり、俺も何だかんだで疲れてたのかもしれない。だから意識せず、あんな呟きが洩れてしまったんだろう。

『頑張る』って言葉が呪いみたいに聞こえるなんて――我ながら、らしくない科白。

 俺にそう思わせてるのは、目の前でそれなりの頑張りを見せている哲じゃない。勿論、お決まりの科白で励ましてくれたセンセーでもない。俺に『頑張る』って言葉を呪いみたいだって思わせているのは、他でもない。俺のカノジョだ。

 瀬戸がことあるごとに、そう彼女自身に言い聞かせているから――だから、呪いみたく聞こえるんだ。そして、その呪いを掛けているのは多分、俺で。

 夏休みが明けてから、徐々に瀬戸は元気がなくなっていった。ため息の数が増えて、無理に笑うことも多くなった。もちろん、本人はそれを悟らせまいとはしてるけど、付き合っている以上、いくら鈍感な俺だってまったく気づかないわけがない。原因は分かってる。俺が他県の大学を目指すことを決めたからだ。



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