連鎖する僕ら 2 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「……やけに食いつくじゃん」 「お前が気になるようなこと言ったんだろ? 『呪い』なんて、随分不穏な言葉じゃねぇか。気にして何が悪い?」 「そうだよねー」 さばさばした口調で言う成瀬に、哲が同調した。 「タカにしては珍しく物思いにふけってたみたいだしー?」 「いつも憎らしいくらいマイペースなお前がな」 「一体、何事かと思うよねー」 「お前ら、俺を何だと思ってやがる……?」 言いたい放題の奴らに向けて、俺は呻いた。こっそりと握り拳を作ってみたりする。 だがこちらを気にすることもなく、哲と成瀬はあっけらかんと声を揃えて言い放った。 『野球バカ』 「……悪かったな」 嫌味なまでにユニゾンしやがったその答えに、俺は脱力した。悔しいが否定できない。小学校で野球を始めてから今まで、俺の生活も思考も常に『野球』が中心なんだから。 そして多分、これからも。 ふ、と息を吐く。すると、哲が気遣わしげに眉を寄せた。 「何、マジでどうしたの? あ、もしかして担任に何か言われた?」 「や、別に」 ついさっき終わった担任との話では、特別なことを言われたわけじゃない。ごく普通に励まされただけだ。頑張れよって。 そのことを告げると、今度は成瀬が心底意外そうにこちらを向いた。そして訊いてくる。 「もしかしてプレッシャー感じてんの? 珍しいな」 「お前、さっきからヒトのこと何だと思ってんだよ……」 めちゃくちゃ純粋に驚いてる様子の成瀬を、半眼で睨みつけてやる。とはいえ、そう思われても仕方ないか。俺自身、自分がプレッシャーに弱いとは思わない。そう思い直し、すぐに視線から力を抜いた。そして、首を横に振る。 「別に……そんなの誰だって感じてるもんだろ? 気にしてねーよ」 「やっぱり」 「その辺りは、さすがタカだよなー」 妙に納得した様子で、成瀬と哲は頷きあった。そういうお前らも、相当だと思うぞ。自分の勉強だってあるだろうに、哲の分まで面倒みてやってる成瀬とか、特に。俺がそう言ってやると、成瀬は軽く肩を竦めた。 「ヒトに教えんのは、自分の復習にもなるからな」 「成瀬先生カッコいいー」 成瀬の答えに、哲が感嘆の声をあげる。それを成瀬はイヤそうに見やって、ため息をついた。 |