連鎖する僕ら 2 しおりを挟むしおりから読む目次へ 俺が黙ったままでいると、絡むのを諦めたんだろう。哲は何やらぶつぶつ言いながら、再び問題集へと戻っていった。最近のコイツは、今までになく勉強熱心だった。そりゃ年明けにはセンター試験が控えてるわけだから、必死になるのは当たり前だ。真面目に取り組んでるのは、別にコイツだけじゃない。でも、何ていうか、明らかに気合いの入り方が違う。 「藤原と同じトコ行くためとはいえ、すごい変わり身だよなあ……」 呆れ半分、感心半分といった面持ちで成瀬が俺の思いを代弁してくれた。その言葉に哲が顔を上げる。そして、真顔で言い切った。 「悪い?」 「や、別に悪かないけど」 「……まぁな」 しれっとした口調で言われて、成瀬と俺は顔を見合わせた。やっぱり本気なんだな。お互いに、その事実を再確認する。 少し前に明らかになった、哲が藤原に惚れたという事実を。 二人とも特に仲が悪かったわけではないから、そういうことになっても別におかしくはないんだろうけど。でも、やっぱり驚いた。しかも自他共に認める勉強ギライの哲が、藤原と同じ学校に行くために頑張ってる。長い付き合いの俺でも、そういう姿はあまり見た覚えがはない。コイツが必死になるのなんて、せいぜいが野球に関することぐらいだったからだ。どちらかというとノリが軽くて調子がいい人間だから、哲のそういう姿を目の当たりにするってのはなかなか新鮮だ。 (――ま、やるときはやる奴だからな) 藤原も哲も同じような進路を希望していたらしいから、まるっきり不純な動機というわけでもない。一人の人間の存在が、どれだけ大きな力を与えてくれるのか。そのことを身をもって知っている俺としては、哲が頑張ってる理由もよく理解できる。そういう『頑張り』は、端で見ていて気持ちいい。 だけど、あいつの『頑張る』は――。 「――で、何が『呪い』なんだ?」 再び問題集に舞い戻った哲を横目で見つつ、成瀬が口を開いた。まるで俺の考えを読んだのかってくらい、絶妙なタイミングだ。俺は軽く瞬いて――ぼそりと言い返した。 |