連鎖する僕ら 2 しおりを挟むしおりから読む目次へ ――『頑張る』って、呪いの言葉みたいだ。 教室の窓枠に凭れて俺が呟くと、少し離れた席で問題集を広げていた哲と成瀬が、それぞれ不可解そうに眉をひそめた。 「――はい?」 「どうしたよ、曽根」 二人とも興味深そうに、俺を見る。その視線に急に居心地が悪くなり、俺は内心で舌打ちした。そもそも独り言同然の呟きだったんだから、わざわざ食いついて来なくてもいいってのに。 呟いた言葉の根っこにあるのは、ガラじゃねぇけど――焦りとか不安とか、そういう弱音みたいなもんだった。だから出来れば、あまり深く突っ込んでは欲しくないのだが。さて、どうしたもんか。 一瞬であれこれと考えをめぐらせる。だが、俺がごまかそうとしてることに気づいたんだろう。哲が片手で頬杖をついて、ニヤリと嗤った。 「何、タカったらどうしたのー? 言えないような恥ずかしい話?」 「うるせえ」 やたら嬉しそうに絡んでくる哲を一睨みして、俺は窓から離れた。すたすたと早足で歩いて、成瀬の後ろの席に陣取る。 「……おい」 成瀬が呻いた。その成瀬と向かい合って座ってる哲が、不思議そうな声をあげる。 「何でそっちに座んの? こっち来ればいいじゃん」 そう言って、自分の隣の席をぺちぺちと叩く哲に、俺はすげなく言い返した。 「お前がうざいからイヤだ」 「ひどっ!」 「俺は防波堤かよ……」 俺の言葉に哲は大げさに椅子ごと後退り、成瀬は口許を歪めた。そんな二人を無視して、俺はまた窓の外に視線を向ける。 広がってるのは、日差しがだいぶ弱まった青空だ。だけど、もう一時間もしないうちに今度は夕焼け色に変化するんだろう。今は、そんな放課後の時間帯。 俺たち元野球部の面々は何故か七組の教室――俺と哲のクラスだ――に集まっていた。授業が終わったあと、進路指導を受けてきた俺が教室に戻ると、そこには成瀬に英語を教わる哲の姿があった。別に適当にしゃべって、さっさと帰っても良かったんだけど。何故だかすぐに帰る気にもなれず、俺はそのまま一緒に居残ってた。理由らしい理由はない。本当に、ただ何となくだ。 |