連鎖する僕ら 1 しおりを挟むしおりから読む目次へ (……イヤだな) どうしようもないって、分かってたってイヤだ。今までの『当たり前』がなくなってしまうのはつらいし、苦しいし、寂しい。 だけど、曽根の邪魔はしたくない。重荷には、なりたくないんだ。 ふと沸き起こった――泣きたい衝動を唇を噛んでやり過ごす。電話の向こうの曽根に絶対に気付かれないように、そっと息をひそめて。 だけどあまり長いこと黙っていると、変に思われるだろう。そう思って、わたしはつとめて明るい声を出した。 「そうだ、あのね。今日放課後、冴香と数学やってたんだけど」 『また分かんないトコでもあったか』 「ハイ、ありました……」 呆れた声で言う曽根に、苦笑いしながら返した。すると電話の向こうから、『やれやれ』とため息が聞こえてきた。思わず、首を竦める。 「えーと、お手数だとは思うんですが……」 『わかった、わかった。明日、まとめて持ってこいよ。教えてやっから』 「ごめんね。曽根だって、自分の勉強あるのに」 邪魔になりたくないなぁって思ってるそばから、コレだもん。ホント厭になってしまう。 軽く自己嫌悪していると、曽根の『いいよ、別に』という声がした。 『――構わないって。俺がお前にしてやれること、これぐらいだし』 「え?」 思いがけない言葉に、わたしはきょとんと瞬いた。曽根はそのまま続ける。 『俺は散々、お前に応援してもらってたってのに、何も返せてないからさ。だから、このくらいは協力するって』 「曽根……」 彼のくれた言葉に、胸がじんわりあったかくなる。追いやったはずの衝動が再び舞い戻ってきて、わたしは空いてる手をきつく握り締めた。気を抜いたら俯いてしまいそうなわたしに、彼が優しく告げる。 『頑張ろうな』 囁くように、落とされる。 『しんどいけどさ。進路、別になるから……変に不安にさせちまってるだろうけど』 あぁ、やっぱり見透かされてる。そう思いながら、わたしは黙って彼の声に耳を傾けた。どうせ堪えることに手一杯で、まともに喋れないもの。何も言わないのが、いちばんいい。 すると彼の声に、少し力がこもった。 『でも、それ以外は何も変わんねぇから。付き合うの、やめる気なんてないし……だから、その、』 |