連鎖する僕ら 1
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「まさか、マミーだったとは……」

「だから言うなって言ってんでしょうがっ!」

 ぽろりと零れたわたしの呟きをがっちり拾って、冴香が再び大声をあげた。思い出しちゃったんだろう。うっすら頬が赤くなってて――うわぁ、何か新鮮。

(かーわいー)

 今度はちゃんと心の中で呟いて、わたしは手元のカップを口にした。

 冴香をこれだけ混乱させてるマミーこと、間宮哲(まみや・てつ)はわたしのクラスメイトであり、わたしの彼氏・曽根隆志(そね・たかし)の親友でもある。今はもう引退しちゃったけど野球部のエースで、いつもニコニコしてる人当たりのいい人だ。どちらかと言えばいじられキャラで、調子のいいことを言っては曽根や冴香に突っ込まれてて……うん、だからまさか、こんな展開になるなんて思ってもみなかった。確かに仲は良く見えたけど。

 最初に噂を耳にしたとき、とにかく驚いた。曽根なんか、固まっちゃってたもん。そしてちゃんと本当のことを確かめて、わたしと曽根はまた驚くことになった。でも、わりと素直に受け入れられたのも事実で。

 よくよく思い出してみれば、マミーは冴香と一緒にいると、いつも楽しそうだった。何かにつけて冴香に構って、返り討ちにあって――それでも、冴香を見る目は優しかったから。

 だからまぁ、二人のカンケーがいいほうに転がってくれたらなぁなんて、思わなくもないんだけど。こればかりは、当人同士の問題だから何とも言えない。わたしには見守ることぐらいしかできないし。

 マミーに告白されてからこっち、冴香は本当にヘンだった。いや、今もヘン。今までに見たことないくらい狼狽えたり、ぼーっとしたり。そんな冴香の姿は新鮮で、可愛いなぁって思う。そういうとこを引き出せてるんだから、マミーに全く望みがないわけじゃないのかもしれない。

 それに、不思議なことに。

「そんなに怒ってるわりに、マミーのこと、避けたりしないよね? そういえば」

 頬杖をついて訊ねると、冴香がぐっと詰まったのが分かった。彼女は不自然に視線を彷徨わせて、言いにくそうに口を開く。

「それは別に……避けたって意味ないし。今更、気まずくなるのも何だから」

「じゃあ、メーワクってわけじゃないんだ?」

 その言葉に首を傾げたら、いよいよ冴香はヘンな顔をした。そして彼女らしくない、ぼそぼそっとした口調で言う。


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