彼と向日葵少女 しおりを挟むしおりから読む目次へ そんなわけで。 「あのさー、冴香さん」 一瞬で藤原に惚れた自覚を持った俺は、あれから数日考えた末、彼女にある疑問をぶつけることにした。 放課後の図書室で、静かに勉強中だった藤原は、あからさまに迷惑そうなカオをして俺を見る。 「うるさいわよ、間宮」 相変わらず、すげないお言葉だ。だけど俺としても、ここで引くわけにはいかない。何せ俺の今後の動向を左右する大事なことを訊かなきゃなんないんだから。 「訊きたいことがあるんだって。訊いたら、しばらく黙るからさぁ」 目の前の席に陣取って、俺は机に身を乗り出した。そして、両手を合わせる。 「な! 頼むよ!」 「分かったから!」 藤原は小声で鋭く、俺を諫めた。 「分かったから、少し声を落としなさいよ。子どもじゃあるまいし。図書室では静かにしなさい、まったく……」 「はーい」 お小言に胡散臭いくらいの笑顔で返事をする俺を、藤原は顔をしかめて睨んだ。せっかくキレイな顔してんのに、勿体ない。 手にしてたシャーペンを机に置き、彼女は姿勢を正す。ちゃんと話を聞く態勢を作ってくれるあたり、律儀なヤツだよなぁ。そんなことを思いながら、俺は口を開いた。 「前に言ってたろ? 『三年間は恋愛しない』って」 「言ったけど?」 それがどうした、と言わんばかりに藤原が首を傾げた。 「アレってさ、いつまで有効?」 「は?」 「受験が終わるまで? それとも卒業まで?」 「ちょっと、何、」 「いいから答えて」 多少強引な言い方で、俺は藤原に答えを求めた。いきなりの質問に、彼女は目を白黒とさせている。 「イミ分かんないんだけど」 「そのまんまのイミだよ。こないだのヤツは『受験があって、その気もない』から断ったんだろ?」 「そう、だけど」 「じゃあ受験が終わって、その気になれそうなヤツがいたら考える?」 「えーと、」 「まさか、この歳で恋愛するのが怖いってわけじゃないよね?」 「――別に、そういうんじゃないわよ」 |