投げ込まれた石ころ 3
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「瀬戸ー、手伝ってもらって悪いなー」

「助かった。ありがとな」

 間延びした陽気な声のマミーと、相変わらずぶっきらぼうな口調の曽根。二人からお礼を言われて、わたしは慌てて両手をパタパタと振る。

「気にしないでよ。結構楽しかったし」

 これは本当。いつも一生懸命練習してる彼ら――ひいては曽根の役に立てるんだと思えば、実にやりがいがあった。だからわたしは笑みを浮かべつつ、そう応える。すると、二人はほっとしたみたいに笑った。

「そういや聞き忘れてたけど」

 ふと思い立った様子で、曽根が訊ねてくる。

「お前、野球のルールわかんの? 女って知らないヤツ多いからさあ」

 一瞬、思考が止まった。だけど口は勝手に動く。

「知ってるよ。知り合いがやってたから。あんまり細かいことは自信ないけど」

 その科白に、隣の冴香がちらりとこちらを見た。その知り合いが誰のことを指しているのか、彼女は知っている。

 曽根とマミーは「へえ」と感心したように頷いて、また笑った。心なしか、嬉しそうだ。

 ――そうだよね。わざわざ話すことじゃない。

 胸中で言い訳する。何となく後ろめたい気分なのは、有ちゃんがわたしの好きな人だったっていう事実があるからだ。でも、それこそ聞かれもしないのに喋るような話じゃない。――だから、別にいいんだ。

 気がつけばちょっと心配そうにわたしを見ていた冴香に、微かに頷いてみせた。それに彼女も、そっと視線だけで返してくれる。そんなやり取りをしていると、底抜けに明るい声でマミーが言った。

「じゃあ、しっかり応援してってくれよな! やっぱ観客がいると、一段と気合いが入るぜ!」

 俺、今日先発だしー。そう言って、からからと笑う。

 曽根もそんなふうに思ってくれるのかな。

 爪の先ほどの期待をもって彼の顔を窺おうとすると、それより先にマミーが口を開いた。

「タカなんか、いつも以上に準備に余念がないしな!」

「黙れ哲」

 マミーの言葉に、曽根はぴしゃりと言い返した。うわいつも通り容赦ないんだから。

 でも、その頬は少し赤かった。

 それに気づいたのは、わたしだけではなかったようで。

 わたしと冴香とマミー。それぞれがニヤニヤニコニコしていると、曽根はあからさまに不機嫌な表情(かお)をして大声をあげた。



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