まいりました!
しおりを挟むしおりから読む目次へ






「……載せましょうか」

「っ!!」

 そう言って、箱に手をかけたのは曽根くん――わたしの彼氏さんでした。

 曽根は軽々と箱をカートに載せて、トイレットペーパーも落ちないように載せてあげて、また元の位置に戻ってくる。

『ありがとうございますっ!』

「イエ」

 二人分のお礼の言葉に照れもせず、彼はしれっとしたカオで軽くかぶりを振った。

(うわーうわーうわーうわーっ!)

 わたしは心の中で大絶叫。だってこんなスマートに、他人に親切にできるなんて……!

(スゴイ、曽根っ! 優しい!)

 浮かんでくる笑みを抑えきれず、わたしは片手で口元を覆った。

 それだけでも尊敬しちゃう出来事だったっていうのに、曽根がやったのはそれだけじゃなかった。

 お母さんの買った品物はすべて『マイバスケット』に移されて、それもカートに載せられる。

 そこで曽根は再びお母さんに声をかけた。

「車っスか?」

「え、えぇ」

「荷物載っけんの、手伝いますよ」

「い、いいんですか?」

「いいっスよ」

 そんなやり取りを交わしたあと、曽根はわたしを振り向いた。

「ワリ、瀬戸」

「っ! は、はいっ!」

「俺の分、一緒に買っといて」

「わ、わかった」

 ちょっとすまなそうにこっちを見下ろしてくる彼に、わたしは大きく頷く。

「入口んトコで待っててな」

 曽根はそう言い置いて、お母さんを促すとカートを押して店の外へ。

 わたしはその背を満面の笑みで見送った。

 胸の中がホコホコと、あったかくなるのを感じながら――。


*  *  *


- 213 -

[*前] | [次#]






「#オメガバース」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -