さくら、ひらひら 7 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「お前その様子じゃ、今日は気まずいから俺のこと避けようとか思っただろ?」 「何で分かるのっ?」 さっき思わず脳裏をよぎった考えを当てられて、わたしは狼狽えた。曽根は『やっぱりな』と苦々しく顔をしかめている。 ――うわぁ、更に気まずい。 不機嫌そうに黙り込む曽根。わたしは自分の失態に泣きたくなった。何で馬鹿正直に言っちゃったかな。今度は完璧に怒らせちゃったみたいだ。 どうしようどうしよう、と考えあぐねいていた矢先。 彼がとった行動は、まったく予想外のものだった。 むにょん。 「――っ!?」 「あ、やっぱ伸びた」 「いひゃいいひゃいいひゃいっ!」 「やらけーな、餅みてぇ」 「あにふんのーっ!」 悪びれた様子もなく、曽根はぐにぐにとわたしの頬を引っ張る。しかも両手で。 「〜〜〜〜っ!」 手加減はしてるみたいだけど、痛いものは痛い。わたしは彼の手首を掴んで、足を蹴りだした。 「痛っ!」 適当に放った足は、どうやら曽根の脛の辺りにヒットしたらしい。曽根は呻いてわたしの頬から手を放し、しゃがみこんだ。ふん、ざまーみろだ。 「……時々、凶暴だよな。お前って」 「曽根が悪いんでしょ! いきなり何すんのさ、もう!」 ああもう、何かほっぺたがジンジンする。唇を尖らせてそこを擦っていると、曽根はさっき同様に悪びれもせずに、しれっとのたまった。 「逃げようとか考えたヤツにお仕置き」 「だからってあんなに引っ張んなくてもいいでしょ!」 すっごい痛かったんだから! 握りこぶしで力説して、わたしは曽根から顔を背けた。そして、同時に思いだす。 そうでした、最近優しかったから忘れてたけど。このヒト、基本的に俺様な人だったんだ。 目尻に浮かんだ涙を拭いながら、ゆっくり曽根に視線を戻した。ちょうど彼は立ち上がるところで、少し見下ろす視点なのが妙に新鮮だ。 「ていうか、さ」 だけど、あっという間に元通り。何とも言いがたい表情でこちらを見下ろす彼を、いつも通りにわたしは見上げて、その科白の続きを待った。 「昨日の話はもう気にしなくてもいーよ。するだけ無駄だし」 「何それ?」 まったく意味が掴めない。散々『煽るようなカオするな』って言っといて、一晩明けたら『もういい』なんて。(しかもムダとまで!) (ホントに俺様思考だなあ……) 呆れ半分、むかつき半分で曽根を見上げたら、彼はそっぽを向いてボソリと呟いた。 |