さくら、ひらひら 6
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「あんま煽んな、頼むから」

「『煽んな』って……」

 何のこと? と言いたげに、瀬戸が首を傾げる。しかし、すぐに思い当たったんだろう。やっと引いたはずの頬の赤みを復活させて、瀬戸が突っ掛かってきた。

「そ……そんなつもりないもん! 曽根のえっちっ!」

「ンだと、てめえ……!」

 悲しいかな、否定はできない。否定できないが、しかし。

(分かってねえ……っ!)

 コイツの何気ない表情が、仕草がどんだけ俺にとって凶悪なもんなのか。

(まったく自覚なしかよっ)

 ぷるぷると震える拳を押さえ込み、俺は怒鳴った。

「誰のせいだと思ってんだよ!」

「わたしのせいじゃないもん!」

「お前以外に誰が居るんだっつーの!」

「そんなこと考える曽根がいけないんでしょっ!」

「ンなことを考えさせるようなカオをすんな!」

「無茶言わないでよ! いちいち考えてるわけじゃないもん!」

「だからタチがわりぃんだよ!」

「何よそれっ!?」



 桜舞う、小さな橋の上で。

 さっきまでの静けさが嘘みたいに、俺と瀬戸は互いにぎゃんぎゃんと喚いた。

 ムードも風情もあったもんじゃなかったけど。

 このくらい騒がしいのが、俺たちにはちょうどいいのかもしれない。

 どう聞いても下らない言い合いをしながら、そんなふうに思った。



  【続】


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