投げ込まれた石ころ 1
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 どんな小石でも、投げ込まれたら波紋が生まれる。

 時にそれは爆弾並の威力を伴うことだってあるんだ。



 はっきりと秋が来たというには、まだ暑さが残る日が続いている。でも吹く風はだいぶ涼しく感じられるようになった、そんなある休日。

「空が高いねー」

 野球部の使用するグラウンドの片隅で、わたしは空を見上げていた。すると、隣でコンビニの袋を漁っていた冴香が呆れたようにため息をつく。

「のんきよねー」

 そう言って、緑茶のペットボトルを開けた。それで口の中を湿らせると、再びぼやくように言った。

「初めて試合を観に来たかと思ったら、まだ付き合ってないなんて」

「いいでしょ、別に!」

 冴香の非難じみた声に、わたしは唇を尖らせる。

 今日は新体制になった野球部の、初めての練習試合の日だ。相手校をウチに迎えて行われるため、唯一のマネジである冴香は色々と準備が忙しいらしく、その手伝いでわたしも試合開始よりかなり早く来ることになった。

 そして今は準備も一段落した、少々早めのお昼ご飯の時間。部員のみんなもベンチの周辺で、思い思い散らばって食事をしている。その中に、曽根の姿も見える。

 わたしは堪えきれず、へにゃりと笑みをこぼした。それを見て、冴香がやれやれと首を振る。

「まだ正式に付き合ってるワケじゃないのに、頭の中は春らんまんね」

 コトの成り行きを知っている冴香の言葉が耳に痛い。だけど、それでも嬉しいんだから仕方ないじゃないか。

「だって、試合観てもいいって言ってくれるとは思わなかったんだもん」

「てか、今まで観に来なかったのが不思議だわ」

 もぐもぐとおにぎりを頬張りながら言う冴香に、わたしは紙パックにストローを突き刺しながら苦笑う。

「だってさあ」

 何となく遠くを見るようにして呟いてみた。

「ココって、わたしみたいに不純な動機を持った人間が入ったらいけない場所なんじゃないかって」



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