さくら、ひらひら 5
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 そして、言うことには。

「練習でさ、結構汗かいちまって。思ってたより早くあがれたから、一旦帰ってシャワー浴びてきたんだよ。汗くせぇの嫌じゃん。でも、ここまで来んのに急いでチャリ漕いだからさ。結局、また少し汗かいちまった」

 あんま意味なかったな、と苦笑いする曽根。わたしはその答えに納得しつつ、特に意図せずぽつりとこぼした。

「気にしなくてもいいのに」

「は?」

 きょとんとして、こっちを見る曽根。ちょっと間の抜けた表情が可愛い。そんなことをぼんやりと思いながら、わたしは話を続けた。

「だって、それって曽根が練習頑張った証拠でしょ? 別に気になんないよ?」

 わたしがそう言うと、曽根は一瞬何とも言えないヘンな顔をした。そして何やら呻きながら、手を額にあてがう。

「わたし、変なこと言った?」

「あー……」

 曽根は一度ぐるりと視線を巡らせてから、ふるふるとかぶりを振った。そして眉根を寄せて、口を開く。

「お前さあ」

「なに?」

「あんま、そういうこと言うなよ」

「……何が?」

 思ったことを言っただけなのに、何でこんなこと言われるんだろ? 釈然としない思いで曽根を見上げていたら、彼は何か諦めたように笑った。

「分かんねーならいいや。行こうぜ」

 そう言って、隣に立ってわたしを促した。だけど、わたしはすっきりしない。むぅと唇を尖らせて、その場に留まる。

 すると隣に並んだ曽根がまた、しげしげとわたしを見た。

「……なーに?」

 むっとした声で問う。だけど曽根は気にした様子もなく、逆に訊き返してきた。

「背ぇ伸びた?」

「まさか」

 曽根にしては珍しく的外れな質問をされて、わたしは思わず吹き出した。さっきまでの不機嫌な気分も、あっさりと掻き消えてしまう。

 わたしは笑いながら、足元を指差した。指が示す先にあるのは、いつもよりヒールの高い靴。曽根はそれを見て、「ああ」と軽く頷き――そしてニヤリと口の端を吊り上げた。

「転ぶなよ」

「転ばないよっ」

 不敵な笑みにドキッとしながらも頬を膨らませて、先に歩きだした曽根の後を追う。そして、何歩か歩いたところで。

「ひゃ……っ」

「――っと」

 一歩踏み出して足首がカクっとなって、小さく悲鳴をあげたわたしを曽根が支えてくれた。おそるおそる顔を上げると、意地悪く嗤う彼と目が合う。

「お約束なヤツ」

「うるさいよっ」

 慌てて体勢を整えて、ぷいっと顔を背けた。すると、右腕を軽く引っ張られる感触。

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