さくら、ひらひら 4 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「曽根はっ?」 「は?」 「わたし、痩せたほうがいいと思う?」 何だか妙に必死な問いに面食らって、箸からぽろりと唐揚げが落ちた。 (えーと……) 問われた内容を脳内で裏ごししながら、瀬戸を見る。 太い細いで言うなら――コイツは細いほうだろう。小柄だから、余計にそう見えんのかもしんねぇけど。ンな気にするほど、太っちゃいないと思う。――それに。 「あんま痩せてても、なあ……」 「へ?」 「……何でもねぇよ」 最初の呟きはどうやら聞き取れなかったらしく、間の抜けた返事をする瀬戸を俺は適当に誤魔化した。 何となく、言いにくい。 あんまり痩せていても『抱き心地』が悪そうだ、とは。 (ただでさえ小せえんだから……) 手を繋いだりする、ふとした瞬間。瀬戸のパーツの小ささにギクリとすることがある。 それこそ壊れ物に触れるときみたいに、慎重に扱わなきゃなんない気になって、余計な緊張を強いるのだ。 (……考えるな考えるな) 少しばかり後ろめたい気分になって、俺はかぶりを振った。視界に映る瀬戸がきょとんとして、首を傾げる。 「曽根?」 「――いいんじゃね、そのまんまで」 出来るだけ平淡な口調で言って、俺はウーロン茶を口に含んだ。すると瀬戸は瞬きを繰り返して、自分を指差す。 「そう?」 その問いに俺は軽く頷きを返した。瀬戸はまた何か考えるような仕草をして――ようやく納得したんだろう。にっこりと満面の笑みを浮かべた。 「うん、わかった。ありがとう」 「……おー」 内心でほっとして、俺はさっき取り落とした唐揚げに手をつけた。そして、そのまま食事に夢中になってるフリをして、ちらりと瀬戸を窺う。 瀬戸はとても機嫌良さげに、ニコニコと笑っていた。 コイツのこういう素直な反応には、いつも助けられてると思う。 捕手っつうポジション柄か、俺は野球に関してなら相手の考えを読んだり、反応を窺って対策を立てたり――そういったやり取りには自信がある。だけど、その対象が異性となると話が別で。 |