さくら、ひらひら 2
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 クラスは変わらず――だけど選択授業の兼ね合いで、俺たちが同じ教室で授業を受ける時間はだいぶ減ってしまった。もともと教室内で一緒にいることも少なかったし、放課後も俺の部活が忙しくなってきたし。そんな状況の中で、瀬戸と過ごす時間は減っていくばかりだ。新学期が始まってからは、ほとんどがこんな調子で。

(やっべぇよな、やっぱ)

 今更ながら、事の重大さに気付く。

 いつもだったらこの時間、瀬戸は成瀬のカノジョである綾部さんと一緒に練習を観に来てるはずだ。だが今、その姿はどこにも見つからない。

 さすがに怒ったかと思い、内心でゾッとした。瀬戸は普段我慢強いかわりに、一度怒ると結構激しい怒り方をする。あと、ヘンに思い詰めるトコも相変わらずだ。

 早いとこ、フォローしとかないと……と俺が考えを巡らせていると、成瀬があっさりとした口調で言った。

「二人なら、今日は来ないよ」

「……ナンデ?」

 問う声が、いささかムッとしたものになったのは仕方がない。だって俺の知らない瀬戸の動向を、何で成瀬が知ってんだ? 正直、面白くない。

 俺は成瀬をジロリと見やった。しかし今度は動じずに、成瀬は淡々と告げた。

「綾部と二人でデートだよ。色々グチりたい話があるんだと」

 三人は選択してる授業が結構、かぶっている。そのときにそういう話の流れになったのだと、成瀬は説明してくれた。

「ふーん……」

 ようやく事情が飲み込めた俺は頷きつつ、けれど胸中で思う。

(だったら一言言ってくれても、よくねぇ?)

 帰りのHRのときには同じ教室にいたんだ。いくら約束があって急いでたんだとしても、帰りぎわに声をかけてくれたっていいんじゃないかと思う。それでなくたって、普段は当たり前のように練習観に来てるんだ。それを急に黙って、取り止めるってことは……。

 つまり。

(――それくらい怒ってるってことかよ)

 思い至って、俺は頭をガシガシと掻いた。そして口からは、ぼやきが零れる。

「何だって、あいつは文句言う前に俺を避け始めるんだか……」

 言わなきゃ分かんねえって、いつも言ってんのに。

 そんな俺の呟きを拾って、成瀬が問うてくる。

「へ? 何が」

「だって瀬戸、怒ってんだろ?」

 だから俺には何も言わないで、帰っちまったんだろう。俺が逆に訊き返すと、成瀬が呆れたように顔をしかめた。


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