思うより、ずっと 4 しおりを挟むしおりから読む目次へ 重苦しい沈黙が漂う。俺とコイツの間にこんなに気まずい空気が生まれるなんてはじめてだ。つまり、それくらい俺たちは今まで上手くやってきたってことで。何も言わない瀬戸に俺はひどくがっかりした。 「好きだなんて、からかってたのかよ」 だから十分過ぎるほど伝えられてたコイツの気持ちさえも疑いたくなっちまって、意地の悪い科白が口をついて出る。けど、瀬戸はその科白に強く言い返してきた。 「違うっ!」 勢いよく顔を上げる。こちらに向けられた瞳は決壊寸前だった。瀬戸はそれに構うことなく、そのまま否定を続ける。 「からかってなんかない! ホントだよ!」 ホントに曽根が好きなんだよ。 弱々しくもらされたそれを俺は少し和いだ気持ちで聞いた。瀬戸の言葉は真っ直ぐに、そのままの意味で俺に届く。――なのに、どうして。 俺が堂々巡りの考えに再びはまろうとしていると、それを止めるタイミングで瀬戸が言った。 「……迷惑かなって」 「は?」 唐突な科白に、俺は疑問符を飛ばした。声が大きくなったせいで、瀬戸がびびって一歩後退る。でも、話は続ける。 「告白したとき、曽根、すごく困った顔した、から。だから、迷惑だったと思って」 普段のコイツからしたら、随分とたどたどしい口調だ。もしかして告白したときより緊張してんじゃないか。 「そう思ったら、怖くなったの……曽根から答えをもらうの怖く、なった」 だって何とも思ってないって言われたらどうしようって。 「ちょっと待て」 そこまで聞いて、俺は瀬戸にストップをかけた。そして呟く。 「何でそうなる?」 「だって、すっごい困った感じだったもん! 寝耳に水って感じで!」 「そりゃそうだろ!」 昼休みの最中に教室でコクられるなんて誰が思うか! 俺がそう言うと、瀬戸はぐっと言葉に詰まった。その様子にとてつもない疲労感を覚えたのは気のせいじゃないはずだ。俺は隠すことなく、大きく息をつく。 |