デートに行こう! 3 しおりを挟むしおりから読む目次へ 内心で思いつつ、俺はまた首の後ろに手をやった。そして出来るだけあっさりと言ってみる。 「お前のことで迷惑なことって、多分ないよ」 「……へ?」 たっぷりと間を取って、瀬戸がぎこちなく俺のほうを見た。 その顔がみるみる赤く染まっていく。 「え、だって、それって」 「あーいいから、落ち着けっ」 突如両手を意味もなくバタバタとやり始めた瀬戸を、片手で宥める。そんなに恥ずかしがられたら、先が言いにくいだろうが! 俺は自身を落ち着けるため、ゆっくり立ち上がった。そして開けっ放しの窓を閉めながら深く息をついた。背中に瀬戸の視線を感じる。 頭を掻きながら振り返って彼女を見た。頬を染めて思い切り上目遣いでこっちを見つめてる、その姿は。 (……めちゃくちゃ心臓に悪いんだけど) 他人より小柄な瀬戸にとって上目遣いは、計算した仕草でも何でもないだろう。しかし、それでも何ていうか――こう、こみあげてくる衝動というのは確かにあるわけで。 「曽根?」 「ああ! わりぃ」 思いの外深く葛藤していたら、瀬戸が訝しげに声をかけてきた。弾かれたように、俺は思考を引き戻す。 「あーと、だからな?」 頭やら首やら、しきりに掻きながら俺は言葉を選ぶ。 「俺も分かったから」 「なに、が?」 瀬戸が首を傾げる。俺は窓枠に寄りかかって、少しだけ彼女から視線を逸らした。 「お前が俺のやってること好きだって言ってくれて、認めてくれてて、色々気ぃ遣ってくれてるってコト。そういうの分かったから、お前が言ったことが迷惑だとか、わがままだとか思わねーよ」 「曽根……」 瀬戸がどこか茫然として呟くのが聞こえる。けれどそれを意識しないように努めて、俺は一気に言いきった。 「野球辞めろとか、今すぐ別れたいとか、そういう話以外ならいくらでも聞いてやるよ」 「――っ!」 「だから、あんま遠慮すんな。言いたいことは言え。俺は鈍いから、言ってもらわねーと気づかないこと、いっぱいあるし。言われても、すぐに何とかしてやれないことのが多いんだろうけどさ」 そこまで言って漸く、俺は彼女をちゃんと見ることができた。気恥ずかしいけど仕方ない。これくらい言わなきゃコイツはまた勝手な思い込みをして、一人で悩むに違いないから。 |