デートに行こう! 3
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 恨めしいほど澄み渡った青空に盛大に舌打ちをかまして、俺は部室から校舎までの道のりをたらたらと歩いていた。朝練終了後、着替えてから、部室の鍵を閉めて、教室に向かってるところだ。いつもだったら一緒にいる仲間も、俺の不穏な雰囲気を感じ取っているのか寄ってこない。なので休み明けの二日間、俺は一人でいることが多かった。

 そして、その二日間。瀬戸は学校を休んでいる。

 結局あの後――どうにか自力で泣き止んでくれた彼女を、俺はいつも別れる駅まで送り届けた。本当は自宅まで送ろうとしたんだけど、瀬戸は『平気』の一点張りで。だけど一人で放っておくわけにもいかないから、その場で親に連絡させて迎えに来てもらうことになった。そして車で来た瀬戸の母親に彼女を引き渡して、俺は帰路についたのだ。(ちなみに瀬戸母は娘同様、小柄で愛想のいい人だった。妙にホッとした気分になったのは絶対誰にも言えない)

 結果的に、拗(こじ)らせてしまったんだろう。瀬戸は見事に欠席する羽目になった。

 一応、その日と翌日にメールを送った。電話しても、まともに話は出来ないだろうから。そして返ってきたメールには『ごめんなさい』と『ありがとう』の二言のみ。

(……それ以外に言うことねーよな)

 たぶん瀬戸はあんなこと言うつもりなかったし、泣くつもりもなかったはずだ。ただ熱のせいで弱気になって、気持ちの箍(たが)が外れちまっただけで。

 でも、そうでなければ俺は瀬戸の本音を垣間見ることはなかった。だからって、すぐにどうにかできるもんでもないんだけど。

 アイツが俺に気を遣ってくれるのに比べて、俺はどうだろう。目の前で泣かれても慰めの言葉ひとつかけられないし、アイツを安心させてやれるような約束もできない。

 付き合ってるってのに、俺は瀬戸に我慢させてばかりで何もしてやれてない。部活中心、野球優先の生活を送ってるだけで。

(アイツ、楽しいのかな)

 俺と一緒にいても『彼氏彼女』らしいことは、ほとんどできない。それは果たして、アイツの望んだ付き合いなんだろうか。

 だらだらとゆっくり歩く。一限は確か日本史だったか。ぶっちゃけ、かったるくて出席する気にならない。

 それでも、確実に時間は過ぎる。俺の横を駆け足ですり抜けて行く生徒が何人もいた。そろそろ始業のチャイムが鳴るんだ。だけど相変わらず、俺の足取りは重い。

 全身全霊でため息をついて、ふと目線を上げた。次々と校舎に飛び込む人の群れ。その中に所在なげに立つ姿を見つけて、俺は軽く目を見開いた。


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