デートに行こう! 2
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「冷たいので、良かったか?」

「……うん」

 俺がスポーツドリンクのペットボトルを差し出すと、ベンチに座った瀬戸は小さな声で返事をした。そして恐る恐る手を伸ばし、それを受け取る。

 ――やれやれ。

 おとなしく蓋を開ける彼女の姿を目に入れつつ、俺も彼女の隣に腰掛けた。そして同じ銘柄のドリンクを一口呷る。

 あれから俺たちは建物の外に出た。屋内のフードコートに行ってみたが、ちょうど昼飯時で座る場所がなかったため、こうして外のベンチに落ち着くことになったのだ。幸い、ここは日なたで風もない。短時間であれば、瀬戸にとって大きな負担にはならないだろう。――短時間で済めばの話、だが。

 瀬戸は相変わらず俯き加減のままだ。何も言わない。

(帰るのやだって言われてもな……)

 常識的に考えて、熱のある人間を連れ回すわけにはいかない。いくら本人が平気だと言い張ったって。それが分からないようなヤツじゃないだろ、コイツだって。

 俺はガシガシと頭を掻いて口を開いた。

「少し落ち着いたら、帰るぞ? 送ってくし」

 お前だってしんどいだろ。

 瀬戸の顔を覗き込むようにして言い聞かす。しかし、彼女は頑なに首を横に振る。

「ヘーキ」

「平気じゃねえだろっ」

 その様子に語尾をやや強めて俺は言った。瀬戸はこちらを見ない。両手でペットボトルを握りしめて、そのまま動かない。

 何なんだ一体。思わず天を仰いでしまう。確かにコイツは時々、ワケの分からない発言をすることもあるが、ここまでヒドイのは今までなかった。

(やっぱ、熱のせいだよな)

 そう思い直し、もう一度説得にあたることにする。場合によっては無理矢理にでも連れ帰るつもりだが、穏便に済ますにこしたことはない。

「……別に水族館は逃げやしねーんだからさ」

 出来るだけ穏やかに、静かな口調で俺は話す。

「また今度来りゃいいじゃん」

 そしてぽんぽんと、宥めるように瀬戸の背中を叩いた。それに彼女はぴくりと肩を震わせた。

「……つ?」

「ん?」

 小声で瀬戸が何事か呟いた。聞き取れなくて首を傾げる。

 そして次に聞こえたコイツの言葉に、俺は固まった。


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