デートに行こう! 2 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「熱があるのに何やってんだ、お前は!」 「……ヘーキだと思って」 ぼそぼそと反論する瀬戸。しかし俺が眼光を鋭くすると、途端に口をつぐむ。 「たった今、しんどそうにしてたのはどこの誰だ?」 「……大丈夫だもん」 ンなわけあるか。 拗ねたように目を逸らした彼女に心中で呟くと、俺は黙ってその手を引いた。行き先はもちろん、外。 「曽根っ?」 「帰るぞ」 驚いて抗議する瀬戸の声を無視して、俺は一歩踏み出す。だが、彼女は動かない。 「瀬戸」 肩越しに振り返って呼びかける。軽く腕を引いてみるが、まったく動こうという気配がない。 (何だよ一体) 眉をひそめて見つめていると、瀬戸はゆっくりとかぶりを振った。 「……やだ」 「は?」 ぽつりと言われたその科白に、俺は眉間の皺を深くした。意味が分からない。 「お前、何言って……」 「帰るの、やだ」 今度ははっきりと聞こえた。意味も分かった。だけど、その我が儘を受け入れるわけにはいかない。 「お前なあ……」 発熱している病人が、一体何を言っているのか。俺は呆れてそう言うが、瀬戸は俯いて、ふるふると首を振る。 嫌だ嫌だと繰り返す。 ふと周囲に視線をやると、何人かの人間と目が合った。どれも興味津々に向けられた好奇の目。俺が見回すと皆一様に逸らしたが、居心地が悪いことには変わりない。 熱のせいだろう。瀬戸はうわごとみたいに『嫌だ嫌だ』と弱々しく繰り返している。 こんな状態の人間、家に帰す以外にどうしろってんだよ。 困り果てて、仕方なく俺は出来るだけ静かに口を開いた。 「ここでつっ立っててもしょうがねーだろ。……とりあえず、どっか座れるトコに行くぞ」 ホントは立っているのだってツライはずだ、今の瀬戸は。 さっきよりは優しく手を引いてやると、瀬戸はゆっくりと歩き出した。その様子に胸を撫で下ろす。 だがしかし。 (この後、一体どーすりゃいいんだ?) 周りの視線を振り払いながら、彼女に伝わらないように注意して俺はそっと嘆息した。 * * * |