デートに行こう! 1
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 しつこいようだが、俺は野球部員で、毎日練習漬けの日々を送っている。そこに最近『瀬戸』という要素が加わったけど、それでも野球中心の生活にほとんど変化はない。当然、土日祝日カンケーなく練習はあるし、場合によっては試合もある。

 フツーの恋人同士ならデートのひとつもするんだろう休日も、俺は野球で彼女に構ってやれてない。今までに、一度も二人きりで出かけたことがない。――コレってちょっと問題だろう?

 だけど瀬戸はこのことに関しては、文句を言わない。野球観てるの好きだからと言って、手伝いや応援に来てくれる。部活仲間たちとも打ち解けて、彼女なりに楽しんでくれている。

 かなり出来すぎだと思うんだ。ホントは無理させてんじゃねえのかって。だからって、俺が野球を辞められるかって言われたら首を横に振るしかない。

 だから今のところ、彼女の寛大さに甘えさせてもらってるんだが……男として、そればっかりはどうよと考えたりもする。

 そんな負い目があるから俺は瀬戸の希望なら、できるだけ叶えてやりたいと思ってる。些細なわがままは聞き入れてやりたい。喜んでくれることなら、何だってやってやりたいと思ってはいる。

 だが、しかし。

(タイミングが掴めねえ……)

 隣を歩くお団子頭を見下ろして、口を開きかけては閉じる。これを今日、何度繰り返しただろう。自分の不甲斐なさに嫌気がさしてため息をつくと、瀬戸が顔をこちらに向けて心配そうに言った。

「曽根、やっぱ疲れてる? 自転車乗る?」

「いや大丈夫、平気」

 瀬戸の不安げな目をまっすぐ見て、きっぱりと否定してやる。能天気そうに見えて意外と『気にする』ヤツだから、ここははっきりと言わなければならない。

 確かに疲れはあったが、いつものことだ。特別、気にされるようなもんではない。

 問題はそういうことじゃなくて。俺があるハナシを切り出せないのが悪いんだけど。

 別に悪いことを話すわけじゃない。むしろ喜んでもらえると思う。てか、断られたらショックだぞ本気で。

 俺が眉間に皺を寄せて悩んでいると、今度はくいくいとコートを引っ張られた。

「そねー、顔怖いよー」

 わたし何かしたっけ?

 困ったように眉を下げる瀬戸。俺は慌てて首を振った。


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