デートに行こう! 1 しおりを挟むしおりから読む目次へ カノジョは大抵いつも、俺に屈託なく笑いかけてくれる。そりゃ怒るときは、びっくりするくらいの勢いで突っ掛かってきたりするけど。短気な俺とは逆で、やたらとイライラしたりしない。 いつも明るい笑顔を浮かべて、俺の傍にいてくれる。 好きでやってることとはいえ、毎日野球漬けの日々の中、上手くいかなくてクサっちまうときだってある訳で。そういうとき、その笑顔に支えられてるなーとか思うことがある。 ガラじゃないし、ンなことを口にしたら絶対「キモイ」とか言われんだろうけど、俺なりに感謝してるつもりだ。 とはいえ、十分ソレを表に出しているのかと問われたら、否と言うしかないわけで。 「曽根(そね)?」 「あ?」 隣を歩く小さいヒトが俺を呼んだ。 瀬戸初璃(せと・はつり)――小柄で幼い雰囲気があるが、れっきとした高校生で俺、曽根隆志(そね・たかし)のカノジョである。頭の高い位置で作った団子がトレードマークの、いつも元気なヤツだ。 秋の終わりの帰り道。今日も今日とて遅くまで行われた練習を終え、俺は自転車を押しながら、瀬戸と駅までの道を歩いていた。本当は二人乗りしていきゃ早いんだけど、帰り道くらいゆっくり話したいという彼女の希望に添って、並んで歩いていくことにした。今日みたいに、瀬戸は自分の部活の日と俺がミーティングだけで終わる日は、必ず待っていてくれる。 それでも待たせてしまうことに変わりはない。本当は遅い時間まで待ってないで、早く帰ってほしいんだ。お互いの自宅が駅を挟んで正反対にあるため、俺は彼女を自宅までは送ってやれないから。まあ俺はチャリ通だからできないこともないんだけど、瀬戸は頑としてそれを拒否する。 曰く。 『練習で疲れてるヒトに、そこまでさせられません! 次の日だって朝練あるんだから、ちゃんと休まなくちゃ!』 えらく真面目くさったカオでぴしゃりと言われて、俺は『でも心配だから、先に帰れ』と逆に言い聞かせた。しかし、彼女は拗ねたカオをしてこう言った。 『……だって、こうでもしなきゃ一緒にいる時間作れないんだもん』 そんなふうに言われたら引き下がるしかないわけで。待っててくれんのは単純に嬉しいし。それに、瀬戸のキモチも分からないわけじゃない。 |