そうして始まる僕らのカタチ 5
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 一歩踏み出せば身にまとわりつく倦怠感に、自分が病人なんだってことを改めて思い知った。

 お母さんは昇降口で待ってくれている。後は車に乗って帰るだけだから、がんばろう。一息ついて気合いを入れてゆっくり歩みを進める。すると。

「わ……っ」

 ブレザーのポケットに入れたままのケータイが震えた。びっくりして足を止める。

 ――メールを受信しました。

 送信者は『成瀬新』。

「……何だろ?」

 不思議に思って受信BOXを開いてみると、そこにあったのはこんな文面。


『さっきはゴメン。よく休んで、ちゃんと熱下げろよ。お大事に』


 さっき? さっきのことって……。

「別に謝られるようなことじゃないよねぇ」

 わたしはひとりごちて、眉根を寄せた。だって成瀬はわたしの髪の毛、直してくれただけだし。

 そりゃ何か妙な緊張感があったけど。

 そもそも。

「何ですぐに放してくれなかったのかなぁ……」

 あの間は一体何だったんだろう?

 考えてみるけれど、熱にうかされた思考回路はろくな働きをしてくれない。なので、わたしはすっぱり諦めることにした。

 まあ、いいや。

「後でメールで訊いてみよっと」

 パチンと音をたててケータイを閉じて、わたしは再び歩きだした。



 ――『恋』って何?

 そう疑問に思ったのは単純な興味だけじゃなくて、きっとどこかで憧れてたから。

 だって恋してる友達はキラキラして可愛くて――だから、わたしもあんなふうになりたいなって思ったんだ。

 今のわたしはどうかな? 憧れたカタチに近づけただろうか。

 近づいてたら嬉しいな。そして他でもない彼の目にそう映ってたら、ホントに幸せ。

 いっぱい悩んで戸惑って、やっと見つけたわたしだけの想いを、キミと一緒にもっともっと素敵なカタチに変えていけますように――。



『そうして始まる僕らのカタチ』終

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