そうして始まる僕らのカタチ 5 しおりを挟むしおりから読む目次へ 「後で、やっぱり違うとか、言わね?」 ぶんぶんと首を振って否定する。乱れた髪が頬にかかった。 「熱のせいで、覚えてないとか……」 「言わないよ!」 突然叫んだわたしに、成瀬が身体を揺らした。驚いた表情で、わたしを見下ろす。 「もう、言わないよ。変わらないよ。だって、ホントに」 ――好きなんだもん。 散々迷って、彼を振り回して、最後に残ったのはそのキモチ。 誰かに決められたものじゃない、わたしが自分で選んだ答えだから。 「俺さ……」 顔を俯けて、成瀬が口を開いた。 「まさか、こんな早く、そんなはっきり言ってもらえるとは思ってなかったから」 一度、大きく息をついた。それに合わせて上下する肩。再び上げられた両目は、しっかり力を取り戻していた。その目でわたしを見て、彼は問う。 「もう取り消し、きかないからな?」 「うん」 「また逃げたりすんなよ?」 「逃げないよ」 「つーか、逃げたって追っかけるからな」 「望むところです」 全部に即答して、わたしは笑った。わたしの答えを聞くごとに、彼の表情が緩んでいくのが分かったから。 そうして最後、成瀬は全開の笑顔で言った。 「スッゲー、嬉しい」 ありがとな。 ぽつりと言われたその一言が深く深く、胸に響いた。そしてほのかな温もりを持って、わたしの身体中に広がっていく。 「お前、カオ真っ赤だぞ?」 熱、上がったんじゃね? 苦笑しながら成瀬が言う。 「かもしんない」 ぽかぽかしてるのは心なのか、身体なのか、よく分からないくらい気持ちいい。 「熱があって、よかったな」 「何で?」 「なかったら言えなかったよ、きっと」 「そっか」 穏やかに返される声を聞いてると、気持ちが何かほっこりしてくる。 もともと人の好い顔立ちの彼が、いつもより更に優しい笑みを浮かべていて。 嬉しくて幸せでも、泣きたくなる――そんなキモチがあるってことをはじめて知った。 |