そうして始まる僕らのカタチ 5
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「只でさえ、昨日は身体が冷えてたんだから。風邪ひくのなんて予想の範囲内だろが。昨日の今日で無理しやがって」

「昨日の今日だからだよー」

 ほっといたらズルズル続きそうな成瀬のお説教を遮って、わたしは唇を尖らせた。

「会いたかったんだもん」

「う……」

「昨日のこと、夢だったんじゃないかって」

 いっぱい色々考えてて、朝になったらそんな不安が胸に生まれた。

 だって冷静に考えたら、嘘みたいだ。わたしが成瀬の『特別』だなんて。わたし、成瀬にひどいことか変なことしかしてないのに。好きになってもらえた理由が分からない。

 そしたら何だか不安になった。彼の顔が見たくなった。ちょっとぐらい無理したって、成瀬に会いたかったんだもん。

 恨めしげに視線をやると、成瀬が真っ赤な顔で立っていた。目が合うと、彼の口が開く。

「夢なんかじゃねえよ」

 いつになくぶっきらぼうに彼は言った。

「全部、ホントにあったことだし……夢にされたら俺だって困る」

「うん」

 その言葉に嬉しくなって、わたしは目を細めて頷いた。視線の先にはまだ赤いままの彼。何だか居心地悪そうに、うろうろと視線を彷徨わせてる。昨日の迫力が嘘みたい。

「成瀬、照れてる?」

「……やかましい。つーか、お前帰らなくていいのか?」

 ふざけた問いを切り捨てて、彼がもっともらしい疑問をこちらに向けた。それにわたしは身体を起こしながら答える。

「お母さんが仕事帰りに迎えに来てくれるの。もうそろそろかな」

 さすがに一人で帰るのは無理そうだから。

 苦笑混じりに告げると、成瀬が心配そうに眉をひそめた。

「ホント大丈夫か?」

「大丈夫だよー」

 いつも以上にへらへら笑ってみせる。だってホントにつらくないんだよ。目の前の彼と話が出来るのが嬉しくて、熱はあっても気持ちは元気なんだ。だけどやっぱり、成瀬の表情は晴れなくて。

 違うのに。こんなカオ、させたくないのに。

 そう思って、わたしは掛け布団をギュッと握りしめて俯いた。

 何て言ったら、成瀬は笑ってくれるかな。

 何て言ったら、成瀬は喜んでくれるかな。

「あのね、成瀬……」

「ん?」

 ゆっくりと顔を上げると、成瀬は怪訝そうな声でわたしを促す。

 キモチは確かにわたしの中にある。それを昨日、彼が教えてくれた。

 嬉しくて、気恥ずかしくて、でも何だか誇らしい。世界中の人に知られたって構わない。それくらい、もうどうしようもない感情。――わたしも、ちゃんと想ってるから。



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